くすりの回覧板

 血圧が高いと指摘を受けた経験のある方は少なからずおられると思います。また、他の方よりも自分の方が血圧は低いのに服用している薬が多いとか、自分ではちょうどよいと思っているのに医師から高いと言われた、という方もおられるのではないでしょうか。
 では、高血圧とはどの程度の血圧を指すのでしょうか。日本高血圧学会の示す高血圧治療ガイドラインでは、収縮期血圧(=上の血圧)が120未満かつ拡張期血圧(=下の血圧)が80未満を「至適血圧」、上が130未満かつ下が85未満を「正常血圧」、上が140以上または下が90以上を「高血圧」と定めています。高血圧と診断されると、食事療法や運動療法と並行して降圧薬による薬物治療が行われます。治療の目標値は患者様個々によって異なり、例えば心血管疾患や脳血管疾患になったことのある方は目標値を低めにする一方、かなり高齢の方は緩めに設定されることもあります。
 但し血圧は日内変動が大きく、更に日内変動に個人差もありますので、自分がどんなタイプか知ることも大切です。例えば、本来夜中に下がるべき血圧が下がらない方は、合併症の危険が高いと言われていますので注意が必要です。健康診断なども含めて一度でも血圧に関する指摘を受けたことがある方は、寝る前と早朝起きてすぐの血圧を測ってみるとよいでしょう。
 最近、一部の降圧薬で不祥事が報道されたためお薬に不信感をお持ちの方もおられると思いますが、降圧効果や安全性に問題があったわけではありません。さらに近年では効果・安全性の高いものが続々と開発されてきています。降圧薬は毎日決まった時間に服用することで十分な効果が得られますので、お薬が処方されている方はきっちり服用しましょう。(㈱メディカル一光・久居センター薬局薬剤師 長田一郎)

 呼吸器内科を受診する患者様の理由として、一番多い症状は咳だと言われています。
 胸部X線検査での異常や喘鳴(呼吸のときにぜーぜー、ひゅーひゅーという)などがみられず、8週以上続く咳を「慢性咳嗽」といい、一番多いと言われています。
 この慢性の原因の約半数は咳喘息で、その次に多くみられるのが、消化器の病気である胃食道逆流症(GERD)です。この胃食道逆流症の患者数は年々増加傾向にあります。胃食道逆流症により咳が出るメカニズムとして2つのケースがあります。
 1つは、食道と胃を隔てている筋肉が一時的にゆるみ、胃酸が逆流して食道下
部にある神経を刺激することで咳が出るケースです。1日に何度も咳が続き、特に昼間に多くみられます。
 もう1つは、加齢などでゆるんでしまい、食道上部の喉あたりまで胃酸が逆流し、その胃酸が喉や気管から肺に入って咳が出るケースです。おのずと夜間の咳が多く、逆流する胃酸の量も多いために胸焼けや呑酸などの食道症状を伴いやすく、比較的、高齢者に多くみられます。
 診察を受けて胃食道逆流症の可能性があると診断された場合、基本的にはまずプロトポンプ阻害薬(PPI)による治療を開始します。
 薬物治療とともに、肥満を解消する、脂肪分や刺激物の多い食品を避ける、禁煙する、大量の飲酒をしないなど、生活習慣の見直しも必要になります。
 安易に咳止めだけを飲み続けるといった対応では、慢性咳嗽を治すことは出来ません。
 咳が数カ月にわたって続いているという場合は、ぜひ呼吸器内科や、専門の医療機関を受診してみてください。(㈱メディカル一光・やまゆり薬局薬剤師 中森亜湖)

 非結核性抗酸菌症とは近年、日本で患者数の増えている肺の病気です。症状、原因菌が結核に似ているため、かつては同じ病気と考えられていましたが、最近の研究で別の病気であることがわかってきました。
 この病気の原因菌である非結核性抗酸菌にはたくさんの種類があり、ヒトに病原性のあるものだけでも10種類を超えます。わが国では、アビウムコンプレックス菌とカンサシ菌が全体の90%を占めています。
 この病気の特徴は結核やかぜ、インフルエンザ等の他の感染症と違い、ヒトからヒトへは感染しません。
 非結核性抗酸菌は比較的毒性が低いため、症状の進行も5~10年と遅く、感染の初期段階では自覚症状が無い場合がほとんどです。症状が進行すると咳が止まらなくなり、痰・血痰、全身倦怠感等の症状が多く見られます。さらに進行すると発熱、呼吸困難、食欲不振等が現れます。
 診断はまず胸部X線を行い、肺に影があれば、CT検査を行います。
 この病気は画像にある程度特徴があるので、熟練した医師は画像から見当がつくようです。また、痰を調べることで菌の種類を特定できます。
 治療は患者さんの症状や年齢等を考慮し、薬物療法を中心に行われます。最も一般的な方法はクラリスロマイシンという抗生物質とリファンピシン、エタンブトールという結核治療薬の3種併用で、完全に治すために1年以上の長期に亘り服用する場合が多いです。
 非結核性抗酸菌は自然界に存在しており、それが感染するということは免疫が落ちていることが考えられます。日常生活の改善によって、抵抗力や自然治癒力を高めることが重要です。規則正しい生活、栄養バランスのとれた食事、ストレスや疲れをためないことを心がけましょう。(㈱メディカル一光・ひまわり薬局薬剤師 山本 康典)

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