くすりの回覧板

 今回は薬の効きめと血液中の薬の量(これを血中濃度と言います)の関係についてお話させて頂きます。
 皆さんも一度は病院で採血を受けたことがあると思います。採血をすると、血液検査によって、体に異常が無いかはもちろんですが薬の血中濃度、つまりどれだけ薬が体に残っているかの確認も行われます。
 なぜなら薬の効き方には個人差があるからです。体の大きさ、薬の吸収の度合い、肝臓や腎臓の機能の違いなどによって薬の血中濃度は異なります。この薬の血中濃度を指標にして飲む回数や量を決めることをTDM(Therapeutic Drug Monitoring、治療薬物モニタリング)と言います。
 TDMが必要なのは、効果が出る量と副作用が出る量が近い薬(安全な範囲が狭いので血中濃度を測定しその範囲に入るよう服用する量を調節する必要があります)や吸収、代謝、排泄に個人差が大きい薬です。主に抗てんかん薬、強心配糖体、抗不整脈薬、免疫抑制剤、テオフィリン製剤、抗菌薬などがあります。
 例えば、うっ血性心不全の治療薬・ジゴキシンに代表される強心配糖体が効きすぎると食欲不振、嘔気、頭痛、色覚異常、不整脈などの中毒症状が現れます。このような場合、血中濃度を測定し、効きすぎているようであれば薬の量を減らす必要があります。
 また、気管支喘息などに使用されるテオフィリン製剤も個人差が大きい薬で、効きすぎると消化器系症状や心拍数上昇、ひどくなると中枢症状、不整脈、痙攣などが生じることが報告されています。このような副作用症状を防ぐために、定期的に血中濃度を測定することは非常に大切です。
 お薬を服用中に何か気になる体調変化がありましたら、医師、薬剤師にご相談ください。(㈱メディカル一光・久居センター薬局薬剤師 浅尾 将史)

 パーキンソン病とは安静時にも体の震えが出て、筋肉のこわばりが強くなり、動作の開始が遅れ、動きが緩慢になったり小刻みになったりする病気です。
 原因は、脳の神経同士の連絡に使われているドーパミンという物質(神経伝達物質)が不足し、別の神経伝達物質であるアセチルコリンの作用が強まり、神経のバランスが崩れることと考えられています。代表的な治療法は、薬物療法、手術による外科的治療、リハビリテーションです。
 薬物療法は、脳のドーパミンとアセチルコリンのバランスを正常に近づけ症状を緩和する方法で、一つは脳内のドーパミンの量を増やす方法です。ドーパミンを直接、補充する方法が理にかなっていますが、ドーパミンそのものを薬として服用しても脳に到達しないため、脳に届く型で、到達後ドーパミンに変化する薬が用いられます。しかし、この方法は長期間行うと次第に薬の効果が落ちてくるという問題点もあります。
 ドーパミンは体内で酵素によって分解され効き目がなくなってしまいますが、この分解酵素の働きを抑えて、ドーパミンの働きをよくする薬や、ドーパミンとは違う構造でドーパミンと同じ作用を示す薬、神経を刺激してドーパミンを出させる薬などもあります。
 もう一つは、アセチルコリンの作用を抑える方法です。抗コリン薬が用いられて、副交感神経の働きを弱めることでドーパミン神経とのバランスをとり、症状を緩和させます。
 パーキンソン病で見られる症状は、ある種の認知症など他の病気でも見られることがあります。また薬の副作用でも同じような症状が現れることがあります。 このような症状と区別するために、気になる症状が現れた場合は、専門医の診断を受けることをおすすめします。(㈱メディカル一光・ひまわり薬局薬剤師 山本 康典)

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