社会

 1月31日、津商工会議所の産業雇用促進委員会=池田和司委員長=とまちの魅力向上委員会=中垣内良紀委員長=の合同県外視察見学会で、少子高齢化や若者の大都市への人口流出が進行する中で、世間とは逆行する形で定住人口の増加が著しい滋賀県守山市と草津市を訪問し、津市の未来のまちづくりを考えていく上でのヒントを探った。

 津市では近年、若年層の大都市への流出が顕著でUターン、Iターンも限られる中、雇用の面からも地域経済を支える中小企業の存続が危ぶまれる状況になろうとしている。次年度に各委員会で津市への提案要望を取りまとめるに辺り、共通する要素を持つ委員会が合同で先進地を訪れて見識を深めることとなった。
 冒頭、池田委員長は「津市に取り入れられる施策の事例やまちづくり等、眼で見て、耳で聞いて提案要望につなげていければと挨拶。中垣内委員長は、「提案要望がより充実したものとなり、津市の活性化につながれば」と続いた。
 最初の目的地である守山市は滋賀県南西部の琵琶湖東岸に位置し、比較的小さな街。令和5年に供用開始した市庁舎で市担当者より、市の状況のレクチャーを受けた。
 昭和45年(1970)の市制施行時に3万5000人だった人口が京都・大阪に1時間圏内という地の利を得てベッドタウンとして成長を続け、約8万6000人まで増加している。そういった事情に合わせて子育て施策を充実させるだけでなく、村田製作所の研究開発拠点や、GSユアサのバッテリー工場などの進出も決定しており、市内で働ける環境も整ってきている。
 津市とは市域の規模や立地条件が大きく違うものの、前述の研究開発拠点の進出計画が出た際、適地にあった駅前のホテルを閉めて、都市計画でフォローを入れるといった市の意思決定のスピード感など、特筆すべき点を見出していた。
 午後からは近隣の草津市に移動し、同市職員から市の概況の説明を受けた。東海道の宿場町として古くから栄えてきたが、昭和29年(1954)の市が誕生した際の人口は3万2000人ほどだった。守山市と同じく大都市圏へのアクセスの良さも追い風となり、現在は約14万人まで人口が増加。子育て政策に非常に力を入れており、平成6年(1994)に立命館大学のびわこ・くさつキャンパスが進出していることも地域の活気につながっている。
 その後、産学公民連携ならではの多様な価値観で都市デザインに取り組むJR南草津駅前の「アーバンデザインセンターびわこ・くさつ」へ移動。地域の大学の教職員や学生の協力も得ながら、様々なワークショップや社会実験を行い、未来の街の姿を描いていることなど、津市でも取り入れられそうな施策や手法のヒントを探っていた。

大門・丸之内の新たな姿  土地の利活用推進へ

前葉泰幸津市長新春インタビュー。官民協働のエリアプラットフォームによって新たな姿が模索されている中心市街地の大門・丸之内地区や、復元が期待されている津城跡の整備など、津市の課題と展望について聞いた。全2回の第2回。 (聞き手=本紙社長・麻生純矢)

 ─津市中心市街地では官民協働によるエリアプラットフォーム「大門・丸之内 未来のまちづくり」が活動を展開していますが、大門・丸之内地区の課題や成果が得られたのか、また今後の展開を教えてください。
 市長  民と官のメンバー、中間的な役割である津商工会議所、それからまちづくり津夢時風といった方々が非常に熱心に活動されており、しかも若い人たちがかなり入っています。非常に活力が出てきたなという感じがしています。そこで考えて実際に動いてくださってるお城前公園の活用やシェアサイクルなど、今ある状態のものについて、どうやってたくさんの方に訪れていただく、あるいは使っていただくかということを主眼に置いて一定の成果が出ています。
 お城前公園もあそこにキッチンカーが来れば、絶対にランチの時間には、オフィスから出てきて、ランチをあそこで楽しむか、あるいは買ってお昼休みに食べることが可能になるだろうなと。その前の年に国道空間でやった時と同じような感じで、一定の需要があるのは見えていたのですが、それに加えて食べ物ではない憩いのスペースでヨガの教室や、ちょっとしたフリーマーケット、小イベントをやっていました。それが凄くよかったと言われるのは、普段何にも使えてないところが、そこに行ったり、滞留するところ。今後もやっていかなければと思います。LUUPのシェアサイクルについては、設置場所が22か所で、津新町駅と津駅の2か所と津なぎさまち以外は大門・丸之内に集中しています。これは一定の成果が上がってるのですが、同時にもう少し広く捉えて、新町と津駅と大門・丸之内の連携は、路面電車や深夜シャトルバスなど、色々意見ありますが、自転車も1つの解決策ということが同時に分かってきました。
 両地区の価値を改めて考えていくと、津駅は津駅の魅力があり、津新町は津新町の賑わいがある中で、独自に輝いていくことが求められます。繋がりという意味では、自転車の実験もそうですが、リンクは必要です。ですが、両地区にはオフィスがたくさんあるので、そこで働く人たちにとって利便性が高くなるようなエリアにしたいっていうのも必要。また、住んでる人が、どうやって買い物ができる環境を確保しようかといったことも必要です。それから中央公民館などの公共施設がある中で、たくさんの人にご利用いただく場所としても必要です。こういった前提条件ははっきりしています。ところが、それに向けた中長期の話をすると、このまちをどのような姿にしていくかについては、まだ 答えが出てない状態です。
 津駅はどちらかというとプロジェクトが進んでいますが、両地区は、どちらかというと、もう少し地道なまちづくりになっていきます。まちづくりを考えるときに一番ポイントになるのは、不動産。不動産をどのようにしていくかという中で、私の肌感覚で言うと、10年前は、不動産を動かそうという感じはあまりなかった。「先祖代々の土地だし」とか、「うちの息子たちが場合によっては帰ってくるかもしれないし」というような感じの人が多かった。それに対して、今は自分がここに住んでる、あるいは自分で商いしてるからもう少し頑張るんだけれども、10年後はこういう感じにしたいという考えが、はっきりと伝わるようになってきたんです。
 今考えてるのは、そういった地権者の意向、それから、土地を買いたい・借りたいという人たちの意向、これら1件1件を、不動産の取引ができるかどうかというところまで行くのがなかなか難しいとしても、お互いのニーズとシーズをキャッチする仕組みを作っていくべきではないかなという風に思っています。それを信頼性の高い仕組み、システムとして、整えることができれば、多分両地区の不動産価値は上がると思っています。
 いわゆる短冊型、かまぼこ型の間口が狭くて奥行きが広い土地利用での不動産価値は一定の限界ありますが、それが2件、3件まとまって、綺麗な形になれば、その不動産の価値は、単価で言えば、1件ずつ売る時と、3枚まとめて売るときを比べると、多分単価は上がると思うんですよね。それをどうやって実現していくかが、今年の大きな課題です。
 ─現状では空き店舗が取り壊された短冊型の土地は、需要のある駐車場に変わっていくケースが多いですね。ただ新たな賑わいを生み出すという観点から考えると、このまま駐車場ばかりが商店街の目ぬき通りに増えていくと、どうしても寂しく感じてしまいます。この辺りはいかがでしょうか。
 市長 お隣がまだ商売やってるから、うちは商売をやめて、跡地を駐車場にするというのは一旦はいいんです。じゃあ駐車場にして、今から20年、30年、50年と駐車場経営していくのかというと、そうでもないかもしれない。そこから、もうワンステップあって、そのお隣が今度業態を変えるときに、うちの駐車場と一緒に何かができるのか、できないのかというところへ来ると思うんですよね。実は国道の西側では百五銀行本店ビルができる時、岡山証券が出てこられた時などで自然な形で、民間事業者の自らの力でできているんですよ。国道の東側はそういう形で、不動産を動かそうというケースがまだ少ないですね。
 ─後継者がいない店も多いと思うので、土地の利活用は地元の人にとって、悩ましく先が見えない問題になっている面があると感じます。
 市長 津生協病院が寿町に移転をして、一定の不動産、駐車場事業が亀山高茶屋久居線の東側でも出ているということがあって、やっぱり不動産価値は結構流動的なものなので、大門でも、道路に車を通すと多分不動産の価値がまた変わってくるとか、色々動きがあると思うのですよね。ある意味、土地の話をすれば経済そのものの話になります。
 それともう1つは、相続とか、個人の土地所有でも、お役に立てるようなシステムが作れるのであれば作りたい。既に空き家情報バンクでは、それができていて、その商店街版みたいなものの作りたいんですよ。色々調べてるんですけどね、余り例がない。空き家バンクは比較的、容易にアプローチでき、売りたい方も買いたい方も自然な形でネット上でマッチングされますよね。ところが、商店街はそこまで簡単じゃないので、商店街のまちづくりは思い切って市街地再開発するか、古い商店街を守りに行くかという両極端。その真ん中辺りで、現状で快適に過ごせている方々には、引き続き現状の土地利用をしていただきつつ、土地利用の姿を変えたいなと思う方の背中をどうやれば押せるか、あるいは取引の機会に近いところまで持っていけるか。実際取引するなら宅建業者がやればいいと思いますが、その手前のところまでの難易度は高いですが持っていきたいです。
 ─行政の優れている点は、民間とか個人よりも長いスパンで遠くを見られることだと思うので、そういった観点での制度設計とか色々なことを考えていただくという役割がこの状況下では非常に大事と感じます。
 市長 一人ひとりの人生設計や事情があるので、「もう今年やりましょうよ」と言っている人の隣は「10年先でいいよ」というケースはあり得ます。じゃあ、10年間誰かが今年やりたいという人の土地と建物を担げるかという話になると、なかなか難しく大きな課題です。 
 ─弊社も立地的に両地区は地元ということになるので、毎日目にしている風景が、どのように変化していくかは非常に楽しみです。エリアプラットフォームでの様々な取り組みを含めて、今後にも期待しています。

津城跡の更なる整備に向けて  市民からの意見を集約へ

 ─津市では近年、津城跡の整備に向けて様々な取り組みを進めています。例えば、石垣を傷める樹木の伐採や旧社会福祉センターの解体設計を実施し、来年度から解体工事に着手する予定です。また、2026年のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』では、津藩祖・藤堂高虎の主君である豊臣秀長が主人公として描かれる予定であり、多くの来訪者が期待されます。市として、今後どのような形で津城跡の整備を進めていくべきと考えますか。また、将来的に津城の復元を進める場合、どのような課題が考えられるかをお聞かせください。
 市長 仕えているとき、参謀や官房長官のような役割でサポートをしていたと感じます。そこで政を司る能力を蓄えた時期と思います。津城が高虎公の時代にどのように築かれ、それを守っていくのか考えていく必要があります。古い写真が残っている櫓をどのように復元していくのかも課題となっています。一方、津城は今のお城公園という形に姿を変え、市民に親しまれる憩いの場になってきましたが、古くなってきたのでどのように変えていくのか動きを作りつつあります。その象徴が旧社会福祉センターの解体。当時は公園内に大きな建物を建てるのが認められていましたが、今はスタンダードではありません。解体をすれば天守台が綺麗に見えるようになります。前市長の時代には、旧津警察署の跡地に建物を建てようとしたら、文化財保護審議会が堀の跡なので止めに来ました。石垣を傷めず解体できる見通しがついたので令和7年度より解体工事をしたいと思っています。
 次の段階は、ふるさと納税で津城跡整備に充ててほしいと言われているお金が、8000万を超えたということで、以前から一旦の目標とされてきた1億円にだんだん近づいている状況。それで復元をしてほしいという声もありますが、それでいくのか市民に問いかけていく時期に来ています。そのため、広報紙で津城の歴史について連載しています。津城に天守閣があれば、話はシンプルですが、市民に津城の歴史を知って頂いた上で、櫓の復元という形で賛成して頂き、1億円で足りない分の財源が必要になるので、それを理解して頂けるか、というところになっていくと思います。復元には、津城跡の利用の仕方で、市民の皆さんが何を一番大切になさるかだと思うんです。令和7年度は、様々な意見を伺いながら、市役所の中での議論も進めていく時期と思っています。
 ─津城は続日本100名城に選ばれて以来、県外からも数多くの人が訪れるようになっています。大河ドラマで更に多くの人が訪れることも予想されるため、更なる整備に期待いたします。本日はありがとうございました。  

 14日10時~15時、「セントヨゼフ女子学園高等学校・中学校」=津市半田=の中学3年生が、地元企業と共に開発したコラボ商品・当日限定商品・ワークショップを提供するイベント「まるっしぇんと」を開催。生徒たちが各企業のこだわりや想いを時間をかけて理解しつつ、商品やワークショップを開発し、それを広く発信していくという取り組みは地域活性化とキャリア教育を両立する意欲的な試みといえる。

5月から実施している総合学習の締めくくりとして行われるもので3年生61名が参加。校舎や体育館で、生徒と企業のコラボ商品(はちみつ・酢等)や当日限定商品(食事・スイーツ等)、ワークショップ(ドローン・クリスマスリースづくり等)を提供。卒業生・保護者・協力企業(団体)・地元企業という人のつながりを活かしつつ、生徒たちには『地域や地元企業に対する理解を深める』『多様な価値観を理解する』といった教育面での成果が期待される一方で、地域や協力企業にとっても『地域活性化』『地元を大切にする子供の育成』『参加団体の魅力発信』といったメリットも見込まれる。
 協力企業・団体の数は14で、所在地は津市が中心。ブース参加が東洋軒、レストラン ラ・メール、あさい農園、明和プラテック、樹花工房、むらた表具店、野田米菓、はちみつやさんmiel、下津醤油㈱、山二造酢㈱、三重ボランティア基金。PRへの協力が㈱SigN、写真のはせ、三重エフエム放送㈱。
 生徒たちは5月から協力企業・団体ごとに5人のグループに分かれ、計7回の授業で企業の担当者と共に、各企業の定番商品を普段と違う装いで提供する方法を考えたり、新たな商品やワークショップの開発をしたり、コラボ商品の包装のデザインなども行った。更に、より深く協力企業のことを知るために、夏休みに職場体験をしたり、工場や農場の見学も行った。
 また、イベントの企画などを行う実行委員会の生徒も、プレスリリースやPR用の資料、チラシなどをしっかりと作り込むなど、広報の業務もこなして情報発信に取り組んでいる。
 地域の次代を担う生徒たちが地元企業とのつながりを深め、その魅力を発信していくこのイベントは地域活性化とキャリア教育を両立させる意欲的な試みといえる。
 実行委員長の永井杏奈さん(15)と実行委員の髙山明莉さん(14)は「各ブースの企業を知ってもらい、企業の仕事に向かう思いを知ってもらいたい」と来場を呼び掛けている。
 ※一般用の駐車場は限られているため、来場者は出来る限り公共の交通機関の利用を。近鉄津新町駅からはバスが出る。

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