社会

表彰状を手に前葉市長(左から3番目)を訪問するメンバー

 津市でもサル・シカ・イノシシによる獣害が深刻化する中、先進的な取り組みで全国から注目されている「片田地区獣害対策協議会」が農林水産省主催の『鳥獣害対策優良活動表彰』で農林水産大臣賞に次ぐ生産局長賞(団体の部)に輝いた。農家だけでなく、地区内11の自治会の全住民を巻き込んで、追い払いなどを定めた獣害対策5カ条を軸に活動するなど、文字通り地域一丸の獣害対策が高評価を受けた。

 津市の平成23年度の獣害の被害面積123haで、被害金額は4千400万円。過疎化が顕著な中山間地域の農地で被害が深刻で、耕作放棄地の増加や地域衰退の一因になったり、近年では市街地にもイノシシが出没するなど、様々な問題を引き起こしている。その一方、決定打と呼べる程の対策が無いのが大きな悩み。
 そんな中、先月26日、東京都文京区にある全林野会館で行われた『鳥獣害対策優良活動表彰』で生産局長賞を受賞するなど、「片田地区獣害対策協議会」は全国でも先進的な取り組みで高い評価を受けている。
 同地区には大きな田園地帯が広がっており、山の恵であるたけのこも特産品として知れている。しかし、約16年前より獣害が発生し始め、生産者たちが個々に対策に取り組んできたが、被害は徐々に拡大。農作物だけに留まらず、地元の市立片田小学校の通学路にもサルが出没するなど、地域住民共通の問題にまで発展していった。
 そこで平成19年に同協議会が発足。発足の経緯からも分かるように、地元の11自治会に加え、片田駐在所・三重県猟友会津支部・JA津安芸・消防団など多岐にわたる21団体が参加。
 同協議会では住民全員が獣害対策の『主役』と定め対策の基本となる5カ条も制定。地域内の農地に出来る限り柵やネットをかけたり、餌場となる放任果樹を伐採。啓蒙活動と共に、わな免許の取得を促進したり地域の駐在所の警官が追い払いに必要なパチンコやエアーガンの使い方を指導するなど研修会も行い、地域の守り手を育成。もし動物を見かけた場合、整備した連絡網で会員や警官らがすぐに駆けつけ、追い払いを行っており、年に数回、より多くの住民が参加した合同追い払いも実施。被害発生場所などをデータ化し、対策に生かしている。
 更に県や市の協力を受けサルに取り付けた発信機で群れの状況を把握しながら対策を練ったり、農地に隣接する茂みと農地の間の草を刈り込み動物が隠れにくくする緩衝帯を設置。更にシカ捕獲に成果が期待されているドロップネットの実証実験にも参加している。また、昨年設立された津市広域獣害対策協議会(8協議会が所属)のリーダーとして活躍。県内外からの視察も受け入れている。
 ここまで多彩な活動ができるのも、獣害を農家だけでなく問題を地域住民全体で共有できたことにある。活動費も地域内に3つある団地の住民たちも含め、同地区2000戸5000人ひとり一人から提供を受けているという全国でも希なスタイルを実現している。
 東京での表彰式の翌日の27日に同協議会のメンバーが津市役所の前葉泰幸市長を表敬訪問。全国から選り優りの団体・個人5組に残り、最高位の農林水産大臣賞に次ぐ評価を受けた今回の快挙を報告した。
 組織の中心で尽力し、津市広域獣害対策協議会の会長も務める相談役の丹生田高雄さん(67)は「今後も終わりなき戦いを地域のために続けていく」と力強く語った。この言葉通り獣害対策に・特効薬・はないが地域が文字通り一丸となって、獣害に立ち向かえば着実に成果は現れる。津市の獣害対策のトップランナーとして同協議会の更なる活躍にも期待が集まる。

 津市は新年度予算案に平成28年度のオープンを目指す屋内総合スポーツ施設の建設費を盛り込むなど、建設への準備を進めている。そんな中津市体育館=津市本町=など、津市の既存の体育施設では障害者に対する利用料の減免制度が曖昧な形で運用されており、ソフト面での未熟さが浮き彫りとなっている。国体開催を目標とする屋内総合スポーツ施設建設を前に津市は我が身を振り返り襟元を正す必要がありそうだ。

 
 津市体育館など、津市の体育施設を個人・団体が利用する場合には当然、利用料が発生する。団体に関しては、市が条例を運用するための内規に減免対象となる団体がリストアップされており市を始めとする地方公共団体・自治会・老人クラブ連合会などが健康増進や交流など、然るべき目的で利用する場合に制度が適応される。また、それ以外の団体に関しては管理者が必要と認めた場合、減免制度を利用できるといった旨の一文が添えられているため、現場の判断次第である程度柔軟な運用ができる。
 障害者団体に関しては、リストアップこそされてはいないが、公共の福祉に寄与しているという観点からも減免対象と明記されている団体と比べても、なんら遜色は無く、苦しい台所事情で運営を続けている団体が多いことも考慮すれば減免制度の適応に異論も無いはず。しかし、現状は津市体育館を例にすると、障害者団体が直接利用を申し込んだ場合、市は「リスト外の団体は内規の〝特例〟で現場だけでは減免に値する団体か判断しかねる」という理由で減免制度の利用を積極的に勧めていない。
 どんな場合も障害者団体には減免制度を適応しないというスタンスを貫くのであれば、ある意味での公平性は保たれているが各障害者団体と業務上の関わりが深い市の障がい福祉課を通じて、体育館側に働きかけをした場合には減免対象として扱っている。つまり、同じ団体が同じ内容で利用しても、ルートによって減免制度が利用できない。これでは余りに不公平だ。
 これに対して県の施設である鈴鹿スポーツガーデンやサンアリーナなどの施設では、身体・知的・精神の3障害に対して、それぞれの障害(療育)手帳を所持する者やその者が関わる団体が然るべき目的で利用する場合は減免制度を適応すると規定で定めている。津市もこれを参考すれば、障害者団体に対する対応はそう難しくないはず。もちろん、それ以外の団体でも柔軟に対応すべきだろう。平成33年の三重国体開催も大きな目的として屋内総合スポーツ施設は建設されるが通例通り障害者全国スポーツ大会も共に開催される可能性は高い。津市は新年度当初予算案に同施設の建設費約5億1千万円を盛り込むなど、着々と準備を進めているが『仏作って魂入れず』と批判を受けぬよう現状を正した上で公正なソフト面での整備・運用も求められている。

 「津駅前都市開発㈱」は、同社が運営するアスト津7階の空きテナントを『学びの場』としてリニューアル。津駅前という好立地を生かして地域の大学や同ビルに入居する企業や市民団体などが、高校生から社会人までを対象とした質の高い多彩な公開セミナーを行う。江戸時代にあった津藩の藩校の教えを現代に生かす「有造館ゼミナール」や地元経営者らによる「三重モーニング・カレッジ」など注目の内容が目白押しだ。 

 

 近年、津駅前は大規模のオフィスビル建設が続いており、テナント誘致競争が激化している。そんな中、アスト津は高い入居率を維持しているものの、将来を見据えた経営戦略が求められていた。そこで津駅前都市開発は、昨年よりビルに新たに付加価値を生み出す様々な事業を実施。具体的には、一階の空きテナントを『にぎわい交流サロン』として開放したり、映画を軸にした事業も進行中。更に行政とも企業とも違う第3セクターならではの立場から産官学連携を積極的に進めながら、地元企業との繋がりを強化。入居テナントの収益増と共に新規入居者獲得や津駅前の地域活性化を視野に入れた取り組みを行っている。
 その一環として、同社がアスト津7階で長らく空きテナントになっていた一室を『学びの場』としてリニューアル。広さは約100坪で机・椅子・マイクなどを設置し、大学・入居テナント・市民団体などが公開講座を開く。当然、単なる〝場所貸し〟ではなく、温故知新をテーマとした質の高い多彩な公開講座を高校生から社会人まで広く提供する。津市が3セクの見直しを進める中、津センターパレスやポルタひさいの先駆けとなる事業をめざす。
 今年行われる講座のトップバッターは、津藩士の子孫らによる藤堂藩五日会と同社がタッグを組み開催する「有造館ゼミナール」。有造館は江戸時代後期に開設された津藩の藩校で、日本の写真術の黎明期を支えた堀江鍬次郎や我が国の海洋測量の第一人者である柳楢悦らを筆頭に数々の優秀な人材を世に送り出している。この有造館の教えを現代社会に生かそうと月2回ペースで講座を開く。18日には作家・童門冬二氏を招き特別講演も行ったが大盛況だった。明日には第1回目の講義も行われる。
 その他にも目を引く講座としては、来月から開催される地元企業の経営者らによる「三重モーニングカレッジ」。講座運営の中心となるシニアフェローには百五銀行相談役の飯田俊司氏・井村屋㈱会長の浅田剛夫氏・辻製油㈱社長の辻保彦氏・ヤナセメディケアグループ代表の柳瀬仁氏と地元の経済界を代表する面々が名を連ねており、始業前の朝のひと時にアスト津1階のカフェ・アマーレで健康朝食を食べた後、経済・福祉・環境・文化など多彩なテーマの講座で学ぶ。双方向の学習をテーマとしているだけに貴重な意見交換の場にもなりそうだ。更に来月にはここ数年、三重大や地元企業などが連携し、津センターパレスで行っていた「地域が応援する高校生セミナー」を誘致。同セミナーの中心人物である三重大地域戦略センター長の西村訓弘教授も社会人・企業・学生が議論を交わす公開講座を開講する。1階に入居している赤塚植物園も家庭園芸ゼミナールを開くなど、テナントも巻き込みながら、魅力溢れる講座を企画している。
 また、他の大学との企画も進めており、今後も利便性を生かした様々な人が集う学びの場としての発展が期待されている。
 各講座の概要は以下…
 ▼三重モーニングカレッジ」…3月13日7時40分~8時50分(4月以降は毎月第1金曜日)」。初回講師は丸紅㈱執行役員で人事部長の葛目薫氏。参加費は6カ月分1万2000円。
 ▼第11回地域が応援する高校生セミナー…3月28日9時50分~16時15分。講師は清酒・宮の雪の宮崎酒造㈱・宮崎由至社長など。高校生対象。参加無料。
 ▼西村訓弘教授の公開ゼミナール…3月28日18時~20時(毎月1回開催)。
 ▼赤塚植物園の家庭園芸ゼミナール…年4回(6月・8月・10月・12月)。受講料7000円(4回分の材料代・資料代など)
 各セミナーの詳細や参加申込みは津駅前都市開発℡059・222・4122へ。

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