社会
18団体で構成する「津郷土芸能連絡協議会」の創立20周年を祝う記念式典と祝賀会が12日、津市センターパレスホールで開かれ、地元選出の県会議員、市会議員ほか来賓多数と関係者の175名が参加。20年の節目に歴史ある津の郷土芸能を更に充実させ、魅力ある活動の継続と次世代育成に取り組むことを誓うと共に、晴の日を皆で祝った。
同協議会は津市の郷土芸能の歴史や魅力を伝えることを目的に2003年に10団体で発足。その後、市町村合併などを経て現在、18団体で構成する。毎春の「郷土芸能ふれあいフェスティバル」や、津まつりで演舞などを披露しているほか、歴史ある津の郷土芸能を充実させると共に魅力ある活動の継続・次世代育成に取り組んでいる。
冒頭、挨拶に立った主催者代表の森直樹会長は「多くの先輩方、1000名を超える当会関係者の方々に感謝と敬意を持って本日を迎えることができた。今後も伝統芸能を子ども達に伝承していく」と謝辞を述べ、今後の更なる発展に期待感を示した。
来賓の前葉泰幸津市長は、 「地域の伝統芸能の技・技術を継承するには、それを披露する場が必要。コロナ禍で2年間、津まつりが開催できなかったことで、継承し続ける事がいかに大変かを再確認した。当たり前のように行われてきたことが、実はそうでは無かったんだと気付かされた。まつりを催行するには準備、安全の確保などが必要で、そのノウハウを繋いでいくのは実に大変であると。郷土芸能を通じて人の心の繋がりを確認する場になっている。その意味で協議会が果たしてきた役割は非常に大きい」と感謝した。
また、津商工会議所の伊藤歳恭会頭は「18団体は、唐人踊り、しゃご馬、太鼓、獅子舞、津音頭、よさこい、など非常に多岐にわたっている。次世代育成と郷土の文化を守って頂いており、本当に素晴らしい協議会だと感じる。津商工会議所は〝演舞をしない〟唯一の加入団体ではあるが、津まつりで披露の場を提供させて頂くことを目的に活動している。また、当会議所青年部の元気玉太鼓も創立以来、お世話になっている。今後も微力ながら郷土芸能発展に頑張っていく所存」と祝辞を述べ、郷土芸能が地域のアイデンティティとして重要な役割を果たしている事を強調した。式典後半では、郷土芸能の活動に尽力した10名を表彰し功績を称えた。
式典後の祝賀会では、今年から同協議会に加入した青山高等学校和太鼓部・葵の演奏でスタート。
来賓である県議会議員7名を代表して登壇した前野和美県議会議長は、「郷土芸能がこのように守られていることに感謝を申し上げる」と述べ、続けて「先日、全国の県議会議長による議長会が3年ぶりに広島県で開かれ、懇親会の場で広島神楽が披露された。古の時代から300年以上の歴史があり、その時代、その時勢に合わせた形で継承されてきたと説明を受けた。我々県議会議員も伝統芸能に関わらせて頂けたら。ぜひお声をかけて頂きたい」と祝辞を述べた。
アトラクションとしてステージでは、ダンスチーム「凛」の演舞や各団体代表者による活動への意気込み披露など多彩な内容で会場を盛り上げた。
※同協議会の構成団体は=青山高等学校和太鼓部、安濃津よさこい組織委員会、伊勢津太鼓保存会、伊予町青壮年会、榊原湯の瀬太鼓、白塚獅子舞保存会、津音頭保存会、津商工会議所青年部元気玉太鼓、津しゃご馬保存会、津青年会議所・高虎太鼓、津・高虎太鼓、津・高虎太鼓華乃津会、津民芸保存会、町屋百人衆、美里龍神太鼓、美杉連山のろし太鼓保存会、分部町唐人踊り保存会、津商工会議所
2022年11月24日 AM 4:55
中部電力㈱の「竹原水力発電所」=津市美杉町竹原=が今年10月で完成から100年、来年1月で運転開始100年を迎える。地球温暖化対策の温室効果ガス排出抑制のため、太陽光や風力など再生可能エネルギーの導入が進んでいるが、大正から令和と長い時の中で自然と調和しながら地域の電力を支え続けてきたこの発電所を紹介する。
豊かな自然に囲まれた君ヶ野ダムの麓。雲出川と、その支流・八手俣川の合流地点付近に竹原水力発電所はひっそりと立地している。JR名松線伊勢竹原駅の南付近の鉄橋辺りを通過する際に車窓からも建屋が見えるが、多くの人が何か気付かずに通り過ぎていることだろう。
明治30年(1897)に三重県県下で初の電気事業を行ったのは津電灯で、すぐに県内各地で電力会社が立ち上げられた。三重県は全国的にもかなり早い段階で水力発電が開始されており、明治32年(1899)に新宮水電が鮒田発電所で発電を開始。次々と県南部を中心に水力発電施設が運転を始めており、大正時代に最盛期を迎える。雲出川では、現在の津市美杉町八知に大正6年(1917年)に大勢水力電気が神河発電所で事業を開始(昭和6年に廃止)、同じく大勢水力電気が認可を受け、同社を合併した北勢電気が大正11年(1922年)10月に完成させたのが「竹原水力発電所」。運転開始は翌1月で100年の節目を迎える。現在は中部電力㈱の三重水力センターが運転及び管理している。県内で現在稼働している水力発電所の中では5番目に古い。
竹原水力発電所の発電出力は760kWで約1600世帯分の電力をまかなえる。形式は水路式で、日本の水力発電所に多く使われているフランシス水車を発電に使用している。取水口は、八手俣川の君ヶ野ダム付近にあると勘違いされがちだが、実際は更にその上流にある。取水口から3つの水路橋を経た水路の全長は約3・4㎞。水は発電所背後の山の斜面を下り発電所内に流れ込む。発電の有効落差は83mとなっている。森林セラピーの高束山コースで通る向谷水路橋は建築物としても非常に趣き深いので一見の価値あり。
100年の間に無人化したり、建物を建て替えたり、水車の改造などは行われてきたが水路のルートはほぼ当初のまま。 現代では、地球温暖化対策の温室効果ガス排出抑制のために、太陽光や風力など再生可能エネルギーを用いた発電法が普及しているが、自然と調和する形で100年にわたり、小規模だが電力を安定供給してきた竹原水力発電所は21世紀のキーワード〝持続可能〟の好例といえる。
大正、昭和、平成、令和と時代を乗り越えてきた発電所は、また次の時代に向けて動きだす。
2022年11月10日 AM 5:00
戸籍謄本や住民票などを本人が気付かないところで不正に取得され悪用される事案が発生したことへの対策として、全国の自治体が導入している「本人通知制度」。県内でも人口の多い自治体を中心に導入されている。しかし、津市は制度に対する法的な整備がなされていないことなどを理由に導入には慎重な姿勢をみせているが、市民に不利益が生じないよう議論を進めていくべき課題だろう。
個人情報保護法の整備など個人のプライバシーに繋がる情報の取扱いが大きく制限されるようになっている中、戸籍謄本や住民票の取得や取り扱いも厳しく行われるようになっている。
弁護士・司法書士・税理士・行政書士・土地家屋調査士・社会保険労務士・弁理士・海事代理士は本人の同意がなくても取得できるが、当然、職務上必要な場合に限られている。しかし、自分の知らないところで戸籍謄本や住民票など個人情報が第三者によって不正に取得され、不当な身辺調査などに悪用されてしまうケースが全国で後を絶たない。
それらの事例は不当な差別にも繋がる可能性もあるため、対策として全国の自治体が導入しているのが、第三者が戸籍謄本や住民票などを取得した場合に本人への知らせが届く「本人通知制度」。全国で導入する自治体は増えており、三重県の近隣では岐阜県、奈良県、京都府、和歌山県などで全市町村が導入。三重県内でも伊賀市を皮切りに四日市市、鈴鹿市、桑名市と人口が多い自治体が導入している。
一方、津市は導入しておらず、今期の津市議会の一般質問で藤田定彦議員から市民の個人情報を守るために導入すべきという声が上がった。
これに対し、津市は導入していない第一の理由として、制度は法による裏付けがなく、市町村がそれぞれの裁量で独自に行っているため、取り組みに差が生まれている点を挙げた。
分かり易い例を挙げると、第三者により戸籍謄本が取得された場合、事前に登録していた人だけに通知する自治体もあれば、本籍地と住民票がある全ての人を対象に通知する自治体の両方が存在している点だ。もう一つ制度開始に踏み切れない理由として、土地の取引や債権整理など法的に正当な理由で戸籍謄本などを取得する業務の妨げになる恐れがあることも挙げている。
また、令和5年度中に戸籍法を一部改正し、現在は本籍地でしか取得できない戸籍謄本を、最寄りの市区町村の窓口でも取得できるようになることも踏まえ、津市では国に対し、本人通知制度と同じ趣旨の取組みを全国共通のルールで行えるよう法整備を求めているが、未だ実現に至っていない。戸籍謄本が全国から取得されるようになれば、制度を実施している自治体とそうでない自治体の差がより大きくなる事態も予想される。
現状でも、本人通知制度を導入している自治体で不正取得の発覚に繋がったケースもあるため、制度の有効性は実証されている。今後、津市は他市の動向などを加味しながら検討を続けていくとしている。
もちろん、津市が望む形で早期に法整備がなされ、全国一律の対応が出来ることが最良だが、もし実現に至るまでに時間を要する場合、市民に不利益が生じる可能性は考慮すべきといえる。
いずれにせよ、最善の選択肢を探っていくべき課題であるのは間違いないと言える。
2022年9月22日 AM 5:00