社会

11月21日、「高田高等学校(6年制)」の生徒有志が、名古屋産業大学、㈱赤塚植物園の協力を受け、レッドヒルヒーサーの森=津市高野尾町=にある常緑樹の枝葉を採取し、葉に含まれる葉緑素の濃度や、光合成によるCOの吸収量などの測定を行った。生徒たちは継続して測定を行い、COの吸収源として優れた緑化木を選定。脱炭素社会に向けた都市計画へ利用できないかも考察していく。

 

 

CO2測定に使う枝葉を採取する生徒たち

CO2測定に使う枝葉を採取する生徒たち

「高田高等学校」=津市一身田町=は、2017年より多様な植生で環境学習の場となるレッドヒルヒーサーの森=同市高野尾町=を持つ赤塚植物園、CO濃度調査に基づく環境教育プログラムの開発と実践に取り組む「名古屋産業大学」=愛知県尾張旭市=の協力を受け、産学連携による環境学習を展開している。
目的は、世界的な課題である環境問題に対して、未来を担う若者達に自らの課題という認識を持ってもらい、それを周囲に伝えられる人材を育成すること。今回は40名の生徒有志がグループに分かれて参加。
生徒達は同大学講師の長谷川泰洋さんや岡村聖教授と共にヒーサーの森に入り、様々な植物についての解説を受けながら緑化木に向いている常緑樹のツバキ、ソヨゴ、スダジイなどの枝葉を採取。同時に継続した観測でデータをとるため、採取した枝の生えていた方位や高さなども記録した。
その後、ヒーサーの森に隣接する朝津味に移動し、葉に含まれる葉緑素(クロロフィル)の量を測定したり、CO濃度測定器を使って光合成によるCO吸収量と、呼吸によるCO排出量の測定を行い、植物ごとに数値の違いが大きいことに驚いていた。今後2月、5月、8月に同様の計測を行い、四季を通じたデータを収集。CO貯蔵庫としての役割を果たす樹木の能力を科学的に分析する。
今までは、葉の量など、見た目や病害虫などの耐性や手入れのしやすさで選ばれてきた緑化木を、COの吸収能力という新たな観点で選定し、今後の都市計画に生かせないかなど、脱炭素社会の実現に向けた取り組みをしていく。  三重県でも昨年に2050年までの温室効果ガスの排出実質ゼロをめざす「ミッションゼロみえ2050」が打ち出されており、その担い手となる生徒達による今回の意欲的な取組みは、より一層意義深いといえる。

新型コロナウイルスの第三波への警戒が高まる中、三重県内の有志5名は様々な感染症対策機器の開発・販売を手掛けている。津市内では、「㈱山川測量設計コンサル」=津市香良洲町稲葉=が高性能フィルターと紫外線殺菌を組み合わせた空気清浄機「コロナケース」を導入した。有志たちは、より小型で低価格な機種の販売も始めるなど、三重県発の感染症防止対策機器の広がりに期待が高まる。

 

 

コロナケースを導入した山川測量設計コンサルの山川社長(右)と 開発者の北村さん(左二人目)

コロナケースを導入した山川測量設計コンサルの山川社長(右)と
開発者の北村さん(左二人目)

コロナケース等の新型コロナウイルス感染症対策機器の開発者は、大手電機メーカーに務める北村祐紀さん(52)=明和町=。自身が長年携わってきた化学分析と浮遊飛沫研究の経験や知識を社会に役立てようと、津市と松阪市の有志4名と7種類の対策機器を開発。販売は㈱アクティス=津市河芸町中瀬=。北村さん以外の4名も、ものづくりのプロで、同社の資材庫に集ってアイデアを出し合い低コストで高性能の機器を作り上げることに注力。空気清浄機「コロナケース」も、その一つで、高性能フィルターと紫外線殺菌灯との組み合わせで、吸引した空気内に漂う0・3マイクロメートル以下の粒子をほぼゼロにして1分間当たり10リューベの空気を排出。飛沫感染のリスクを下げる働きを持つため、オフィスや避難所での活用が期待される。大きさは幅約65㎝、奥行約61㎝、高さ約68㎝。7月の集中豪雨で被災した熊本県八代市の避難所にも無償貸与した。また、コロナケースは、プラスチック製の枠組みに透明のビニールシートを張ったシェルターベッド「コロナックス」と組み合わせて内部の空気を循環させることで、感染症のリスク軽減だけでなく、感染症が疑われる人の隔離ができると共に、シェルター内部の空気を殺菌してリスクを下げた上で排出することもできる。神宮会館=伊勢市=に導入済みだ。
11月14日に、コロナックスを導入した山川測量設計コンサルの山川芳春社長(66)は、本社よりも多くの従業員が働く出張所への設置を決定。非常時等には地域の避難所へ無償貸与する。「コロナ禍において、ウイルスへの対策をしていかなければならない。無償貸与についても、こういった取り組みに賛同してくれる地元の企業が増えると良いと思う」と語った。
有志たちはコロナケースよりも小さく、高さ90㎝ほどでオフィスや家庭に置きやすいサイズの空気清浄機の販売も開始するなど、今後の展望にも期待が集まる。北村さんは「三重県発のものづくりの人達が支え合う取り組みで世の中のお役に立てれば」と笑顔。
コロナケースなどの問い合わせはアクティス☎津244・0083へ。

集中豪雨などによる決壊で甚大な被害が出ている「農業用ため池」。昨年には、より的確な管理・保全を行うため、ため池所有者が都道府県への届け出などを義務付ける法律も施行されている。その一方、ため池の多くが個人資産であるため、高齢化によって管理が難しくなったり、所有者が不明となり荒廃して危険な状態になっても、行政の一存だけでは廃止ができないといったリスクをはらんでいる。

 

全国に約17万カ所あると言われる農業用ため池。そのうち国が平成25年から27年に作成した「ため池データベース」には、受益面積0・5ha以上のため池9万6000箇所が登録されているが、所有者不明(任意回答無し)の池が約30%の2万8700箇所にも及び問題化している。
近年では西日本集中豪雨でのため池決壊による被害が発生したことから、昨年7月、「農業用ため池の管理及び保全に関する法律(ため池法)」が施行。適切な管理保全を促すことを目的に、民間のため池管理者や所有者は都道府県への届け出が義務付けられた。
津市では、全市域で394箇所の農業用ため池が存在し、近年では決壊した場合に下流に被害を与える可能性がある防災重点ため池を214箇所指定。それに基づくため池ハザードマップなども整理してきた。ため池法の対象となる市内にある民間所有の池271箇所のうち266箇所が届け出されている。残り5箇所は、所有者が特定できていない。
法整備で所有者や管理者による適切な保全と管理が明確化されたが、どのようにため池を管理していけば良いのか、不安を持つ管理者や所有者も増えている。そこで三重県では、今年7月に「ため池保全サポートセンター」を開設し、専門家によるアドバイスをしている。
管理が難しくなった池廃止の廃止工事の例を挙げると、池の提体を切って水がたまらないようにした後、水源を農業用水のパイプラインに切り替えを行うといった事例も。その他、調整池への用途変更なども多い。
津市は現状、ほとんどのため池が適切に管理されているが、今後は高齢化と離農者の増加で管理が行き届かなく可能性も十分あり得る。多くのため池が個人資産であり、老朽化や荒廃が進み決壊で大きな被害が出る危険性が増しても、自治体の一存では、ため池の補修や廃止できないのが実情。この点では、近年、顕著となっている空き家問題と非常に似た性質を持っていると言える。
空き家と同様、登記が古く、所有者の相続が複雑化しているため池もあり、いずれそうなることを危惧する声もある。また、補修や廃止の工事費用に関しても、国、都道府県、市町村からの補助は出るものの、一定分は管理者や水利権者の負担となることから、高齢化や離農で受益者が減れば、一人当たりの負担が重くなり、工事したくても出来ないというケースも想定される。
空き家は法整備によって所有者の特定をし易くしたり、倒壊の危険がある空き家を指定し、所有者に適正な管理を促したり、非常時には行政代執行で工事を行えるようになった。ため池も問題の顕著化に先んじた国による法改正も必要だろう。津市でも管理がしっかりされている今のうちに管理者や所有者と話し合った上で、10年先、20年先を見据えた対策を練る必要があるだろう。
ため池の管理に関する相談は、ため池保全サポートセンターみえ☎059・224・3555(毎週月曜・木曜9時~12時)。

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