社会

新型コロナウイルスの第三波への警戒が高まる中、三重県内の有志5名は様々な感染症対策機器の開発・販売を手掛けている。津市内では、「㈱山川測量設計コンサル」=津市香良洲町稲葉=が高性能フィルターと紫外線殺菌を組み合わせた空気清浄機「コロナケース」を導入した。有志たちは、より小型で低価格な機種の販売も始めるなど、三重県発の感染症防止対策機器の広がりに期待が高まる。

 

 

コロナケースを導入した山川測量設計コンサルの山川社長(右)と 開発者の北村さん(左二人目)

コロナケースを導入した山川測量設計コンサルの山川社長(右)と
開発者の北村さん(左二人目)

コロナケース等の新型コロナウイルス感染症対策機器の開発者は、大手電機メーカーに務める北村祐紀さん(52)=明和町=。自身が長年携わってきた化学分析と浮遊飛沫研究の経験や知識を社会に役立てようと、津市と松阪市の有志4名と7種類の対策機器を開発。販売は㈱アクティス=津市河芸町中瀬=。北村さん以外の4名も、ものづくりのプロで、同社の資材庫に集ってアイデアを出し合い低コストで高性能の機器を作り上げることに注力。空気清浄機「コロナケース」も、その一つで、高性能フィルターと紫外線殺菌灯との組み合わせで、吸引した空気内に漂う0・3マイクロメートル以下の粒子をほぼゼロにして1分間当たり10リューベの空気を排出。飛沫感染のリスクを下げる働きを持つため、オフィスや避難所での活用が期待される。大きさは幅約65㎝、奥行約61㎝、高さ約68㎝。7月の集中豪雨で被災した熊本県八代市の避難所にも無償貸与した。また、コロナケースは、プラスチック製の枠組みに透明のビニールシートを張ったシェルターベッド「コロナックス」と組み合わせて内部の空気を循環させることで、感染症のリスク軽減だけでなく、感染症が疑われる人の隔離ができると共に、シェルター内部の空気を殺菌してリスクを下げた上で排出することもできる。神宮会館=伊勢市=に導入済みだ。
11月14日に、コロナックスを導入した山川測量設計コンサルの山川芳春社長(66)は、本社よりも多くの従業員が働く出張所への設置を決定。非常時等には地域の避難所へ無償貸与する。「コロナ禍において、ウイルスへの対策をしていかなければならない。無償貸与についても、こういった取り組みに賛同してくれる地元の企業が増えると良いと思う」と語った。
有志たちはコロナケースよりも小さく、高さ90㎝ほどでオフィスや家庭に置きやすいサイズの空気清浄機の販売も開始するなど、今後の展望にも期待が集まる。北村さんは「三重県発のものづくりの人達が支え合う取り組みで世の中のお役に立てれば」と笑顔。
コロナケースなどの問い合わせはアクティス☎津244・0083へ。

集中豪雨などによる決壊で甚大な被害が出ている「農業用ため池」。昨年には、より的確な管理・保全を行うため、ため池所有者が都道府県への届け出などを義務付ける法律も施行されている。その一方、ため池の多くが個人資産であるため、高齢化によって管理が難しくなったり、所有者が不明となり荒廃して危険な状態になっても、行政の一存だけでは廃止ができないといったリスクをはらんでいる。

 

全国に約17万カ所あると言われる農業用ため池。そのうち国が平成25年から27年に作成した「ため池データベース」には、受益面積0・5ha以上のため池9万6000箇所が登録されているが、所有者不明(任意回答無し)の池が約30%の2万8700箇所にも及び問題化している。
近年では西日本集中豪雨でのため池決壊による被害が発生したことから、昨年7月、「農業用ため池の管理及び保全に関する法律(ため池法)」が施行。適切な管理保全を促すことを目的に、民間のため池管理者や所有者は都道府県への届け出が義務付けられた。
津市では、全市域で394箇所の農業用ため池が存在し、近年では決壊した場合に下流に被害を与える可能性がある防災重点ため池を214箇所指定。それに基づくため池ハザードマップなども整理してきた。ため池法の対象となる市内にある民間所有の池271箇所のうち266箇所が届け出されている。残り5箇所は、所有者が特定できていない。
法整備で所有者や管理者による適切な保全と管理が明確化されたが、どのようにため池を管理していけば良いのか、不安を持つ管理者や所有者も増えている。そこで三重県では、今年7月に「ため池保全サポートセンター」を開設し、専門家によるアドバイスをしている。
管理が難しくなった池廃止の廃止工事の例を挙げると、池の提体を切って水がたまらないようにした後、水源を農業用水のパイプラインに切り替えを行うといった事例も。その他、調整池への用途変更なども多い。
津市は現状、ほとんどのため池が適切に管理されているが、今後は高齢化と離農者の増加で管理が行き届かなく可能性も十分あり得る。多くのため池が個人資産であり、老朽化や荒廃が進み決壊で大きな被害が出る危険性が増しても、自治体の一存では、ため池の補修や廃止できないのが実情。この点では、近年、顕著となっている空き家問題と非常に似た性質を持っていると言える。
空き家と同様、登記が古く、所有者の相続が複雑化しているため池もあり、いずれそうなることを危惧する声もある。また、補修や廃止の工事費用に関しても、国、都道府県、市町村からの補助は出るものの、一定分は管理者や水利権者の負担となることから、高齢化や離農で受益者が減れば、一人当たりの負担が重くなり、工事したくても出来ないというケースも想定される。
空き家は法整備によって所有者の特定をし易くしたり、倒壊の危険がある空き家を指定し、所有者に適正な管理を促したり、非常時には行政代執行で工事を行えるようになった。ため池も問題の顕著化に先んじた国による法改正も必要だろう。津市でも管理がしっかりされている今のうちに管理者や所有者と話し合った上で、10年先、20年先を見据えた対策を練る必要があるだろう。
ため池の管理に関する相談は、ため池保全サポートセンターみえ☎059・224・3555(毎週月曜・木曜9時~12時)。

海を渡る蝶として知られる「アサギマダラ」が津市にも飛来している。県外からも見物客が訪れる津市の観光資源として注目が集まる中、市内では美杉町を始め、アサギマダラが集まるフジバカマ畑は増えているが、今年は開花が少なく苦戦を強いられている。また、将来的な展望を考える上、畑の整備の継続など課題も浮上している。

 

 

 

フジバカマとアサギマダラ(里の丘広場で撮影)

フジバカマとアサギマダラ(里の丘広場で撮影)

アサギマダラは、羽を広げた大きさが10㎝ほどになる大型の蝶。その特徴はなんといっても、沖縄から北海道、遠くは台湾まで海を越えて旅をすること。フジバカマなどのキク科植物の花の蜜を求めて集まる。
津市内では、平成22年に津市美杉町太郎生の地元住民らでつくる団体「太郎生道里夢(タロウドリーム)」が休耕田にフジバカマ畑を整備したところ、開花する毎年10月~11月初旬頃にアサギマダラが飛来するようになり、県内外から多くの見物客が訪れている。そこから年々、美杉町内外で個人・団体が鑑賞スポットを整備。しかし今年は、その多くが酷暑や台風といった気象条件の影響や連作障害で例年と比べて開花が少なく、蝶の飛来数は減少。一筋縄ではいかない自然の厳しさに直面している。
現在、市内で多く蝶が飛来しているのは、津市一志町波瀬の地域住民有志でつくる「里山ファンクラブ」が集落の入り口に整備した「里の丘広場」のフジバカマ畑。連日見物客が訪れている。
美杉町太郎生の中原孝夫さんが整備した愛和園も1400㎡の土地にフジバカマ約1000株が植えられており、今週から来週に花が見頃を迎える見込み。蝶の飛来の増加にも期待している。
アサギマダラの生態は未知な部分もあり、学術的にも注目されていることから、「花街道朝津味」=津市高野尾町=は、三重県総合博物館と連携した「アサギマダラプロジェクト」を展開。施設隣にフジバカマ畑を整備し、飛来スポット化をめざす。鑑賞のために無料解放しており、地元の高野尾小学校の児童の環境学習も行っている。今後はフジバカマの園芸種ではなく、環境省のレッドデータブックで準絶滅危惧種に指定されているフジバカマの原種かつ三重県産の栽培を検討。生物多様性の保全との両立も視野に入れる。
鑑賞スポットが増える一方、少子高齢化が進む中、フジバカマ畑の維持管理は個人や団体の動員力や経済力頼みで、継続性に課題を抱えている。こういった実情を踏まえ、太郎生道里夢では、地元以外の協力者やスポンサーとなる企業を募り、巨勢木材店近くの畑やその周辺の整備をイベントとして楽しみながら行うなど、持続可能な発展を見据えた仕組み作りにも取り組んでいる。
津市の観光資源としてアサギマダラを育てるためにはこういった課題のクリアは必要。栽培費用の補助など、一歩踏み込んだ行政のバックアップも求められよう。

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