社会
津市内でもこの時期、市街地・農村部問わず、路傍で黄色い美しい花を咲かせている『オオキンケイギク』は生態系に悪影響を与えるため、法律によって移動・飼育・栽培・販売などが禁じられている「特定外来生物」。我々の良く見かける生物の中でも、特定外来生物に指定されているものは少なくないため、まずは正しく認識することが重要となる。
平成16年施行の「外来生物法」では、人の生命や身体、農林水産業への被害や、日本固有の生態系を破壊する可能性がある海外原産の生物を特定外来生物に指定。飼養・栽培・保管・運搬・輸入・販売・放逐などを禁じている。違反した場合、販売目的の場合は個人で3年以下の懲役や300万円以下の罰金、法人には1億円以下の罰金が科せられる。販売目的ではない場合でも個人で1年以下の懲役や100万円以下の罰金、法人で5000万円以下の罰金と厳しい罰則が定められている。
現在100種類以上がこれに指定されているが、その代表格といえば、この時期に津市でも、鮮やかな黄色の花を市街地や農村部問わず、様々な場所で見かけることができる「オオキンケイギク」だろう。この植物は北米原産で元々、行政が法面緑化に植えるなどしてきた。しかし、生命力と繁殖力が強く、各地で野生化。在来種を駆逐してしまうため、特定外来生物に指定されている。庭先に生えているものを防除する場合でも法律上、枯死させないと運搬ができない。また、今年もそろそろ種をつけ始めるが、そうなると、国から防除の許可を受けた自治体や団体でないと生きた種を運ぶことができなくなる。法的な問題もあるが、なにより、うかつに種がついた株を動かせば大量の種が飛散し、更に生息範囲が広がることが危惧される。
次いで身近なものといえば、釣りの対象として人気の北米原産のブラックバス(オオクチバス・コクチバス)とブルーギルだが、これらも在来種の駆逐が問題となっている。他の特定外来生物と比べると飼育・運搬・放逐での逮捕例が目立つことも特徴。琵琶湖などリリース禁止条例が設けられている場所を除けば釣った場所でのリリースは禁じられていないが、生きた個体は絶対に持ち帰ってはいけない。
人の身体と生命を脅かす特定外来生物の代表格はオーストラリア原産のセアカゴケグモ。津市内でも発見されており、毒性もあるため、行政なども警戒を呼び掛けることが多い。農作物に深刻な被害を与える特定外来生物として有名なのはアライグマで、津市でも被害が出ている。
これらは既に指定を受けている生物だが、新たに加えられる生物もいる。ペットショップでも安価に売られていた台湾などが原産の「ハナガメ」も在来種のイシガメなどとの交雑が問題となり今年9月より特定外来生物として規制される。更に、観賞魚として人気の北米原産「アリゲーターガー」や「スポテッドガー」などのガー科の魚も平成30年4月より規制対象に。大きくなると体長1mを超えてしまうので、持て余した飼い主が川などに放してしまい、問題化している。これら新たに指定される生物を規制される前から飼っている場合、国の許可を受ける必要があり、繁殖もできなくなる。逆に言えば、今まで以上に最後まで飼う責任が出来たともいえる。
例えば、子供が捕まえてきた生物が特定外来生物である可能性もある。そういった際にも注意を促せるよう、まずは一人でも多くの市民が身の回りの生物に関心を持つことが重要だ。
2016年5月26日 AM 5:00
年々、増加する耕作放棄地の解消に向けて、大規模農家などの担い手への農地集積を進めているが、その大きな障害となって立ちはだかるのが相続未登記農地や所有者不明農地の存在。鹿児島県では全農地の約4割が相続未登記であるという調査結果が出ており、津市ではまだ問題化していないものの、農地を相続した土地持ち非農家に対する呼びかけなど、何らかの対応が求められていくことになろう。
農業の高齢化に伴い、増加し続けている耕作放棄地の解消と農業の経営基盤の強化もできる一石二鳥の施策として国も力を入れているのが農地の集積化。それを促進するために、所有者が管理できなくなった農地を借り上げ担い手に貸し付けを行う農地中間管理機構を国が各都道府県に設置している。しかし、それに伴い、全国で問題化しているのが相続未登記農地や所有者不明の農地だ。国も危機感を感じ、この対策に向けた施策を練っている。
相続未登記農地とは、簡単にいえば、相続人が相続後に登記をしなおさないまま、使用している農地。親から相続を受けた子供がそのまま農業を営むケースが多かったので、大きな問題とならなかったが、実際に地権者の同意を集めて法的な手続きをクリアした上で農地を集積化しようと思うと、大きな問題となって立ちはだかる。中には何代も前の名義のままの農地もあり、そうなると相続人の数は膨大となる。更に、所有者が農地の近くに暮らしておらずコンタクトを取ることすら難しいという状況も実際に発生している。
農地を相続したが、農業に従事しない土地持ち非農家が増加しており、2015年農林業センサスによると、全国の耕作放棄地約42万3千㎡のうちで、土地持ち非農家が約20万5千㎡と半数弱を占めている。資産価値の低い農地に対する所有意識の希薄化しており、相続をしても費用の掛かる登記をしていないケースも少なくない。更に東京などの都会に人口の流入が続いていることもあり、これからこの問題が加速していくことは明白だ。
農業の将来を考える上でも農地の集積化は不可欠だが効率の良い面状の農地をつくりたいのに、所々に相続未登記農地や所在者不明農地が混じれば、虫食い状態になってしまう。そもそも、自治体が固定資産税を課税できないという問題も起こり得る。全国に先駆け、昨年度に相続未登記農地について調査をした鹿児島県では全農地の約4割が相続未登記地だったという結果が出ている。
津市の農林水産政策課によると、津市内では農村コミュニティがしっかりとしており、まだこのような問題は発生していないという。だが、耕作放棄地への対策と農地の集積を進めれば進めるほど、いずれ直面する問題であることは間違いない。後継者がいないため、農業を辞めたい人や農地を相続しても管理できないという人に対して農地利用集積円滑化団体である農業委員会や地元のJA・農地中間管理機構へ相談する必要性をしっかりと呼びかけていくなど、問題となる前に地道な施策を行っていくことが求められる。
今後も所有者不明の農地が増え続けることは国の調査でも分かっており、法改正など、なんらかの対策を取っていくことなることは間違いない。ただし、全国で問題化している空き家問題などと同じく個人の財産権に踏み込む問題である以上、対策に実効力を持たせるのは容易ではない。
集積化に向かない中山間地の農地などの場合は、更に長い間、放置されてしまう可能も高く、時間が経てば経つほど、前述の通り相続人が増え続け、地権者全員の所在確認をするだけでも困難になっていく。しっかりと農業に取り組んでいる人が多い今だからこそ、対策に取り組むべき問題といえるかもしれない。
2016年5月19日 AM 5:00
GWを前に、全線復旧したJR名松線応援企画として、本紙記者が先週20日、同線の全区間を列車で往復し、市のレンタサイクルで津市美杉町を観光する旅の魅力を体験した。津市も、4月29日~5月8日に同線の終点・伊勢奥津駅(津市美杉町奥津)と道の駅美杉・北畠神社(何れも同町上多気)を結ぶ無料臨時バスを運行する。この機会に、同線に乗って美杉町をはじめ沿線に出かけてみては。 (取材=小林真里子)
名松線は平成21年10月の台風で被災し、家城駅(津市白山町)~伊勢奥津駅間で鉄道が運休。沿線の人口減少の影響もあり元々、利用者が少なく、一時は同区間の存続が危ぶまれたが、先月26日に全線復旧した。
今後、同線を活性化する
には観光路線化が不可欠。
市によると、今月11日~17日の同区間の1日平均利用者数は300人弱で、被災前の約3・3倍に急増した。復旧直後で県内外から注目されており、GWも観光客誘客の絶好の機会だ。
今回は、そんな同線の乗車体験を全区間で楽しむため、朝、自宅の最寄り駅である津駅から近鉄で松阪駅に行き、同線の松阪駅9時38分発・伊勢奥津駅11時2分着の列車に乗り換え。晴れていたこともあり、多くの観光客が乗車していた。
同線の魅力の一つが、車窓からの様々な風景。この日も松阪の街や、新緑、日差しで光る清流の水面、見頃の八重桜など豊かな自然の景色が次々と現れ、ほかの乗客も「以前、車でこの辺りに来た時とは違う風景が見える」と喜んでいた。
伊勢奥津駅で下車後、まず近くの「お休み処かわせみ庵」に行き、お茶と笑顔でもてなしてもらい、あまごごはんを購入し、旬の竹の子の味噌汁を振舞ってもらい昼食にした。かわせみ庵の営業は通常土日だが、同線の復旧後、今秋まで毎日営業中。同線利用者などの憩いの場となっている。
続いて同駅前で、市の電動アシスト付き・無料レンタサイクルを借り、20分程こいで約4・6km先の「道の駅美杉」へ。ちなみに同道の駅のほぼ向かいには、自家製の野菜などを使い手間ひまかけて作られた定食や丼、うどんなどが味わえる「旬のお食事処みすぎ」がある。
道の駅で一休みし、13時に約1・2km先の「北畠神社」に向けて出発。途中にある「美杉ふるさと資料館」で地元の情報を収集してから到着し、参拝した。また社務所で、可愛らしい御守りを買うと共に、神社内にある国指定の名勝・史跡「北畠氏館跡庭園」の入園料を支払った。
同庭園の作庭者は細川高国と伝えられている。高国は室町末期の武将で、その娘は伊勢国司7代・北畠晴具の妻となった。武将の手による庭らしく素朴で豪放な魅力に溢れ、歴史の哀歓を秘めた景観をしばらく眺める。
その後、上多気の伊勢本街道沿いにあり、100年以上、「練養甘」のみを作り続けている老舗「東屋」へ。同店は中川康代さんと娘さんが営む(不定休)。練養甘は、北海道産うずら豆などを使い、かまどで薪を炊き調理するなど昔ながらの製法で半日かけて作るそう。さっぱりとした甘さが好評の美杉名物だ。
15時前に同店を出て、同道の駅で再び休憩。時間に余裕があったので美杉町八知の同線比津駅まで足を伸ばしてみた。その後、伊勢奥津駅周辺へ戻って伊勢本街道奥津宿を巡り17時15分発の列車で帰路に着いた。
美杉町には多気を含め、名所があるものの公共交通機関が不便で車以外では行きづらい地域が複数あり、同線に観光客を誘致する上でも大きな課題となっている。今回、無料レンタサイクルがその対策の一つとなり得ることを実感した。
しかし一方、日頃運動不足の私には、坂道の多いこのコースのサイクリングは電動アシスト付きでも体力的にかなり厳しかった。同様に体力や、高齢などの理由でこの自転車の利用が困難な人は少なくない。加えて、途中の飼坂トンネルの通行も危険。従って、臨時バスの運行は非常に有効な対策になりそうだ。
私はこれまでにも取材で何度も美杉町を訪れたが、今回、同線の発着時刻に合わせてゆっくり巡ることで各名所の良さを再発見できた。また列車内や訪問先で地元の方々と交流し、その素朴な優しさに感動した。今後も取材などを通じ、名松線や美杉町のこのような魅力をより多くの人に知ってもらえるよう努めたい。
なお臨時バスは定員53名で、列車の伊勢奥津駅発着時刻に合わせて1日4往復する。臨時バスとレンタサイクルに関する問い合わせは美杉総合支所地域振興課☎津272・8080へ。
GWに美杉町上多気の各地で催される行事を紹介。
《道の駅美杉》
◆敷地内の屋外で様々な商品が販売される(※天候により中止の場合あり)。
①4月29日~5月8日=普段商品を出品している事業所(東屋・藤田こんにゃくなど)が、通常は出品していない商品も販売。
②4月29日=四季折々の花を生けて同道の駅の和室に飾っている地元住民などが、花類を販売。
③5月1日=地元住民が菊芋の漬物、あられを販売。
◆地元のグループがGW中に苔玉作り教室を開催。
問い合わせは同道の駅☎津275・0399へ。
《上多気地区内で沢山の鯉のぼりが大空を泳ぐ》
4月24日~5月10日まで。津市商工会美杉支部多気地区の会員有志が揚げているもの。
《北畠神社の春祭り》
5月5日開催。
◆11時~、祭典=神前奉納演舞……柳生新陰流(第16代尾張柳生家当主)、宝蔵院流槍術(第21世宗家)。
◆神賑行事(雨天時は社務所ホールで)=▼奉納演舞(北境内舞台前)……柳生新陰流と宝蔵院流槍術(13時~13時40分)▼のど自慢大会(13時45分~14時45分)▼お楽しみ抽選会(14時50分~約15分)。
このほか地元団体による飲食の販売も。問い合わせは☎津275・0615へ。
2016年4月28日 AM 5:00