社会
津市は『ポルタひさい』の管理会社から買い上げたフロアを新久居庁舎として来年初めより活用するべく改修工事を進めている。耐震性の低い現久居庁舎は取り壊し、跡地に文化ホールの建設(平成31年度中に供用開始予定)を予定しているが、まだ設計などの詳細は未定の段階。市としては、苦渋の決断だったという側面も否めないが、旧久居市から引き継いだ大きな懸案事項は、幕引きに向って進んでいる。
まず、津市がポルタひさいを庁舎として活用するに至った経緯を簡単に説明すると…ポルタひさいを運営していた㈱久居都市開発は相次ぐテナント撤退の影響で赤字に転落し、金融機関への債務返済が困難な状態に陥った。しかし、津市は旧久居市から受け継ぐ形で金融機関との損害補償契約(市が債務を全額肩代わりした上、同社が持つ土地建物を没収)を結んでおり、その発動が確実となった。そこで同社は市に土地と建物の買取りを要請。市は苦渋の決断とはいえ、この要請に応じ、買い取った建物を耐震性が不足している現在の久居庁舎に代わる新庁舎として改装して使うという流れになっている。
7月より始まっているポルタひさいの改修工事は12月中旬に終了。来年初めの供用開始を予定している。
最も改修面積が大きい1階には、市民課・福祉課・生活課・津市久居保健センターといった利用する市民が多い課を配置。津南工事事務所と市営住宅課分室は少し離れた場所の南館に入る。
2階は、一部のみを改装し、会議室を2つと書庫を設置。3階は津市久居ポルタふれあいセンター(現在一部休業中)のある場所を改装し、地域振興課・市民税課分室・久居教育事務所・ふれあい図書館・会議室・健康増進教室(仮称)を置くという形になる。
現在の久居庁舎の使用は年内いっぱいの予定。庁舎はいずれ取り壊し、老朽化によって現在、閉鎖されている津市久居市民会館に代わる市民ホールの建設を予定。完成は平成31年度という目標が立てられているが現在有識者による話し合いで、設計についてを議論している。ホールの規模や、市民交流の場となるコミュニティ機能をどのように持たせるかといったことを含め、ベストな形を慎重に探っている段階だ。
現状、市として、ここまで計画を進めているにも関わらず、この流れが久居地域の住民へとしっかり浸透していない感は否めない。また、長い歴史を持つ現在の久居庁舎が取り壊されることもあり、悔しい思いで事の顛末を見守ってきた地元住民がいるのも確かだ。
その一方、手放しで褒められる形ではないにしろ、旧久居市が抱えてきた懸案事項に、一応の決着をつけたことは評価に値する。
しかし、ポルタ改修に伴う説明会での市の対応も含め、地元から不満の声も聞こえてくる。大規模な公共事業で、一番恐ろしいのは地域住民との最初のボタンの掛け違え。市は住民が抱える複雑な感情も踏まえた上で、今以上に丁寧な対応を行った上で計画を進めていく必要があるだろう。
2014年8月14日 AM 5:00
津市は今年の県政への要望の中に、知的障害者入所施設の新規整備と既存施設の定員拡充を求める条項を新たに盛り込んだ。この裏には、入所施設の待機者は4月1日現在で532件と年々増加しており、更に18歳以上になっても入所先が見つからないため止む無く障害児施設で過している人たちが平成30年3月31日までに退去させられるという大きな問題がある。
国は障害者自立支援法の施行に伴い『施設から地域へ』をスローガンに「入所施設は障害者を地域から孤立させ、社会参加や自立に反する不適切な存在」とし、新設や定員拡大を認めないという方針を貫いている。
しかし、重度の知的障害者は、精神的に非常に繊細で24時間体制で手厚い介護を受けないと日常生活すらままならないのが現実。そのため、県内に24ある知的障害者入所施設の入所待機数が4月1日現在で532件と年々増え続けている。
国が入所施設の代わりとして整備を進めるグループホームとケアホーム(以下、GHとCH)は、利用者が日中は授産施設などで過ごし、ある程度自立した生活を地域で行うというもの。だが、報酬単価が少なく厚い人員配置が不可能で、重度への対応は難しい。
更に18歳未満の障害児を対象とした入居施設の利用者には、対象年齢を超えても、次の入居先が見つからないため止む無く入所している加齢児が昨年12月時点で県内に27人いる。だが、彼らは、平成30年3月末迄に退去を求められている。
そうなると、障害者たちは家族の元へ戻るしかないが、保護者の高齢化も進んでおり、非常に厳しい現状が浮き彫りになっている。
そこで『三重県知的障害者保護者連合会』は昨年、県議会に対して、施設の拡張(新設)と質の向上を求める請願書を提出。県は加齢児を優先して入所させるようにはなったが施設の新設・拡充は検討していない。
この状況を重く見た津市は、今年の県政に対する要望の中に、知的障害者(特に重度)と加齢児を受け入れるための施設整備及び既存施設の定員拡充を新規項目として盛り込んだ。
津市障がい福祉課では「入所施設とGH・CHは性質の違うので、この要望は国や県に異を唱えるものではない」としながらも要望は保護者の悲痛な声を聞き入れた結果としている。
『施設から地域へ』という考え方は、障害者が社会で活躍する機会を得るという意味で非常に重要だ。その一方、そこからこぼれ落ちた人へのケアが課題となる。今回、より現場や保護者に近い市が声を上げたことの意義は大きいだろう。
2014年8月7日 AM 5:00
暑い夏は、祭りや花火大会といった野外イベントや仲間内での飲み会が増えるシーズンだが、それに伴い自転車での飲酒運転をする人が後を絶たない。自転車にも自動車と同じ厳しい罰則は存在しているが、そのことを自覚していない人も多いため、津署でも検挙を視野に入れた厳しい指導や取締りを行うとしている。自転車は悲惨な交通事故の被害者にも加害者にも成り得る存在であることをより多くの人が強く認識すべきであろう。
「今日は飲むから自転車で行く」。そんな言葉を周囲の人や家族から聞いたことはないだろうか。詳しい統計は取られていないが自動車の飲酒運転が厳罰化されて以降、軽い気持ちで自転車の飲酒運転をする人の姿を見かけることが増えているのは確かだ。
しかし、自転車は道路交通法上、軽車両として扱われている。自動車・バイク以外の車両も法律で飲酒運転は禁じられている。当然自転車の酒酔い運転(呼気中のアルコール濃度に関係なく酒に酔った状態で運転すること)も厳しい刑事罰(5年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金)の対象となっている。
だが、自動車やバイクと違って自転車には免許制度がないため、酒気帯び運転(呼気中のアルコール濃度に応じて基準が設けられている)が適用されない。それと混同され、「自転車なら飲酒してから乗っても大丈夫」という誤解が広まっている可能性もある。
津署管内で今年1月から7月23日まで自転車に行った交通指導623件の内、飲酒は11件。特に厳しく飲酒運転を取り締まっている津市大門から出てくる自転車に乗っている人に声をかけたところ、飲酒をしていた人が多くいたという。このような実情もあり、津署では、積極的に自転車への声掛けを続けている。
少し視点を広げてみるとこの問題は、道路交通法の改正に伴い、路側帯の左側通行と定められたことなど、自転車を取り巻く環境が大きく変化していることにも係わっている。自転車が加害者となった死亡事故に対して数千万円単位の損害賠償を求める判決が出され大きな話題を呼んだことも、その一例だ。
これらはつまり、自転車の法的な位置づけが、自動車と比較した際の弱者から歩行者に対する強者と捉えられるケースが増えているということを示している。まして飲酒の上での事故となれば、相応の責任が問われることは間違いない。
県内では自転車の飲酒運転での検挙はまだ無いが、ここ数年で全国では少しずつ検挙者が出始めている。津署の交通第一課長・伊藤誠司さんは「自転車の飲酒運転は、絶対に看過できない。検挙を前提とした指導と取締りを徹底的にやっていく」と語気を強める。
自転車は、子供から大人まで誰もが気軽に乗れる便利な乗り物である反面、ひとたび事故を起こせば、加害者にも被害者にもなり得る。近所の夏まつりや親しい者同士での飲み会など自転車に乗る機会が増える夏だからこそ、一人ひとりがそのことを改めて強く認識し、飲酒運転を絶対にしないだけでなく、周囲の人々にも強く呼びかけることが重要といえよう。
2014年7月31日 AM 5:00