社会
生態系・人の生命・農林水産業などに被害を及ぼす可能性のある「特定外来生物」に対しては国による厳しい規制が設けられている。しかしそれらは全く特別な存在ではなく、釣りで人気のブラックバスや食用ガエルの通称で知られるウシガエルといった具合に、我々の身の回りにも多数生息している。知らず知らずの内に指定外来生物の飼育や持ち帰りなどを行えば、厳しい罰則が与えられるので注意が必要だ。
ペット用や養殖を目的に多種多様な生き物が世界各国から輸入されている。しかし、中には野生化して様々な悪影響を与えるものがある。
平成16年施行の「外来生物法」では、それら生物を特定外来生物に指定。飼養・栽培・保管・運搬・輸入を制限している。違反した場合、個人には1年以下の懲役や100万円以下の罰金、法人には5000万円以下の罰金が科せる。
同法が適用されるのは、生きている個体に対してのみ(ただし種・卵などにも同様の制限がかかる)。国では、随時、特定外来生物のリストを更新しているが、普段滅多に見かけることのないものから、身近な動物までが名を連ねている。だから、知らず知らずの内にそれら生物を捕まえたり飼育してしまい、法に触れている可能性もある。
数多い特定外来生物の中から、身近なものを紹介すると、まずは釣り人にお馴染みの淡水魚のブラックバス(オオクチバス・コクチバス)とブルーギル。これらを生きたまま持ち帰ろうとしたり、生息地以外の池に放流しようとして逮捕されたという例は過去に何件もある。
次に身近なものといえばウシガエル。食用として養殖されていたが、食材としての価値が下がるにつれて野生化。圧倒的な巨体で在来種を捕食するため、生態系に悪影響を与える。これも、食用にする場合でも生きたまま持ち帰れない。
農作物に深刻な被害を与えるアライグマは近年、津市内にも出没。香良洲町の特産品であるナシを荒らすだけでなく、市街地への出没も危惧されている。
最近、たまに報道されたり、全国の自治体が駆除に手を焼いているのが、今の時季に鮮やかな黄色い花を咲かせている北米原産の植物「オオキンケイギク」。生命力が強く、荒れ地でも育つため、過去には法面緑化にも活用されたが、在来種を押しやるくらいの繁殖を続けている。津市内でも道路の脇や中央分離帯など至る所で見られる。
毒を持つセアカゴケグモのように有害な特定外来生物は話題に上がるが、生態系に影響を与えるだけの生物は話題になりづらい。例えば県内では北勢地方に生息している淡水魚・カダヤシはメダカと姿が似ており、生息域も競合している。そのため、繁殖力の強いカダヤシにメダカが駆逐され、知らないところで生態系が塗り替えられていたということも実際に起こり得る話だ。
また、国は国内で大繁殖しているミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)を在来種のイシガメなどの脅威になるとして特定外来生物に指定する意向を示している。ただし、ペットとして広く飼育されていることを考慮し、禁じられるのは輸入のみになる予定。
このように特定外来生物との関わり方は、非常に難しい。これからの季節、屋外に出る機会も増えるだけに、環境を守るという意識の前に、まずは無用の法的トラブルを避けるため、市民一人ひとりが正しい知識を持つことが求められている。
2014年6月19日 AM 5:00
倒壊寸前の危険な建築物は近隣住民の命をおびやかすこともあり、全国で「空き家条例」の制定が進められてきたが、今国会に空き家対策の特別措置法案が提出される動きとなったため、津市はその成立に合わせる形で調整を進めている。明確な全国一律ルール化によって持ち主に適正な管理を求められるようになるだけでなく、美杉町の「空き家情報バンク制度」のノウハウも生かすなど津市ならではの施策も期待される。
少子高齢化に伴い、全国的に空き家は増加。5年毎に総務省が行っている「土地統計調査」の08年度版(最新の13年度版は制作中)によると、全国の総住宅数5769万戸に対し、空き家は756万戸と13・1%を占めている。
その中でも、適切な管理が行われていない空き家は防災・防犯・景観などあらゆる観点から、まちに悪影響を及ぼしてしまう。特に倒壊寸前の建物は、近隣住民の命を脅かす存在となるため、持ち主に撤去や適切な維持管理を求める「空き家条例」の制定を全国の自治体が進めてきた。
県内でも名張市・伊賀市・熊野市が条例を制定しており、津市でもこの6月議会への議案提出を目指してきたが、4月に自民党の空き家対策推進議員連盟が議員立法による空き家対策特別措置法案を今国会へ提出する意向を示したため、その成立を見込み、条例ではなく、法に合わせた対応を行う方向性に移行した。
空き家対策で最も大きな壁となっているのが、空き家の持ち主がわからないケース。実際には、市町村は固定資産税を賦課する職務上、空き家の持ち主を把握しているが、個人情報保護の観点から、そのデータを基に直接呼びかけることができなかった。法案ではこれを可能にし、調査のために所有者の同意を得なくても、敷地に入ることも認めている。その上で、危険で倒壊の恐れのある建物については「特定空き家」に指定でき、家主に修繕や撤去を市町村が求められる権限を与えている。個人の権利保護が障害となり、公の権利が失われている実情を考慮した内容だ。
また、所有者側が撤去をためらう理由である多額の撤去費と、撤去によって固定資産税の軽減措置が受けられなくなるという点にも配慮。国は対策として税制上の措置や、市町村への補助、交付税の拡充も掲げている。
一方、自治体側の義務として、空き家の情報をデータベース化することを求めている。その上で、危険な空き家の撤去や修繕だけでなく、まだ人の住める空き家に関しては、積極的な利活用を促していく。
法案が新法として成立した場合には来年度の予算に反映される見込み。これに先んじて津市でも、初となる空き家の実態調査を計画中。津市は、美杉町で三重県宅建協会と連携して行っている「空き家情報バンク制度」を行っているという実績もあり、そのノウハウを全域にまで広げて対応することも検討されている。
空き家の増加は人口の減少。つまり、地域力の低下に直結する。リフォームよりも更に大規模な改修を加え、既存物件を生まれ変わらせる「リノベーション」も注目されているなど、施策の展開次第では、定住人口の増加にも繋げられる可能性を秘めている。今後も空き家の増加は確実で、津市には市民の安全・安心を守るという観点はもちろん市政の〝未来〟を踏まえた施策の展開を期待したい。
2014年6月12日 AM 5:00
農業分野では、担い手の若返りが最重要課題となっているが、大きな追い風として注目されているのが国の『青年就農給付金』。45歳未満で新規就農に向けて農業を学ぶ人や、事業としてスタートを切る人に年間150万円を給付するという制度で、今年度も募集が開始されている。津市内でも制度を活用している人がおり、若手の就農人口拡大に一役買っている。
青年就農給付金は大きく「就農準備型」と「経営開始型」の大きく2つに分かれている。制度を大まかに説明していくと…
準備型は、都道府県が認める農業大学校などの農業経営者育成教育機関や三重県内や先進農家・農業法人(三重県内では「みえの就農サポーター制度」に登録している農家)で学ぶ際に年間150万円(最長2年)が支給されるというもの。
経営開始型は実際に事業を立ち上げて就農していく人に支給されるが、しっかりとした技術と経験を持ち、これからの地域の農業を担っていく存在として認知されることが求められる。給付金は準備型と同じく年間150万円だが最長5年支給される(適切な就農をしていない場合や所得が250万円以上ある場合は給付されない)。もちろん、開始型から移行することもできる。
平成24年度の実績では全国で準備型が1707人。経営開始型が5108人となっている。うち三重県内では準備型37名。経営開始型が45名。昨年度の県内実績は準備型が37名。経営開始型が83名となっている。年齢層で見ると、準備型は高校卒業後に三重県農業大学校で学ぶ人が半数近くを占めているのが特徴。一方の経営開始型は、それより平均年齢が少し高く30代が中心。経営開始型の支給人数については御浜町9人、紀宝町8人、津市は四日市市・鈴鹿市と横並びで7名という形で続いている。
そんな中の一人が、「ふぁんきー農園」を経営する平将之介さん(33)=津市美里町南長野=。兵庫県神戸市出身の平さんは三重大工学部卒業後、神奈川県に就職。その間、休日の農業教室に参加しながら、農業に対する思いを膨らませており、30歳を迎えた2011年2月に一念発起し、会社を退職。なじみのある津市に戻りプロの農家から野菜づくりを学び始める。そして、同年の秋頃に独立。今では津市稲場町にある7反(7000㎡)余りの農地で野菜の無農薬・有機栽培などに取り組んでいる。
平さんは無農薬・有機栽培野菜を、子供を生み育てる世帯にこそ食べてほしいと、できる限り価格設定を抑えて販売。主な収益は定期契約した顧客宅へ収穫したての新鮮な野菜を配達することで得ている。更にイベントなどにも出店し、顧客拡大にもつなげている。
しかし、自然との戦いである無農薬・栽培は手間がかかり、自分ひとりの手では販路拡大と良い作物を育てることを両立させるのは想像以上に難しい。まだまだ苦しい今の状況下では、青年就農給付金は大きな助けとなっている。
平さんは「農業の世界は厳しいが、0から100までを自分でつくりあげていくやりがいもある。若い人にも農業の楽しさが伝えられ、しっかりと収益もあげられるようにしていきたい」と想いを込めて語る。
食料自給率だけでなく、少子高齢化に伴う様々な問題の解決に対しても農業分野の振興はキーとなることは間違いない。この給付金制度をきっかけに、就農者の増加が期待されている。
準備型については三重県農林水産部担い手育成課☎059・224・・2354へ(1回目の募集は終了。2回目は9月、3回目は12月に募集する予定)
経営開始型については津市農林水産政策課☎059・229・3172。
2014年6月5日 AM 5:00