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横山池(津市芸濃町椋本)

 午前10時。旧伊勢別街道に沿って椋本から関への約6・5㎞を歩く。
 芸濃町椋本の集落を抜けると巨大な農業用ため池の横山池。元々はこれほど大きくなかったこの池を、幕末に地元の篤志家である駒越五良八が4年の歳月と2万両を投じて大改修がを行い、今の規模になったといわれている。池が周囲の水田に豊かな水をもたらしたおかげで、米の生産量が飛躍的に高まった。
 私は街道に沿って広がる池の堤を登り、池の水面を眺める。そして、一つの物語に想いを馳せると、極彩色の楽園が脳内に広がっていく。その物語とは、三重県出身の小説家・江戸川乱歩の中編小説「パノラマ島綺譚(奇談)」である。
 乱歩は津藩士の家系に生まれており、先祖代々の墓が津市乙部の浄明院にある。大正末期から昭和初頭にかけて雑誌「新青年」に連載されたこの作品のあらすじは以下。ままならない人生に鬱屈とした気持ちを抱える売れない物書きの人見廣介は大学の同窓生で容姿が瓜二つだったM県T市出身の大富豪・菰田源三郎の訃報を聞き、入れ替わりを決意。入水自殺をでっちあげこの世から自らの存在を消した人見は、墓から掘り出した菰田の遺体と入れ替わることに成功し、手にした巨万の富を注ぎ込み、I湾と太平洋の境目に浮かぶS郡の離島を人工の理想郷につくりかえていくというもの。乱歩らしい妖しくも美しい世界で起こる様々な事件が巧みな文章で描かれている。
 菰田の屋敷があるとされたМ県T市とは三重県津市のこと。物語の主な舞台となる島がI湾こと伊勢湾上の現鳥羽市にあたる場所にあるため、T市も同様と勘違いする人がいるが、当時は志摩郡(S郡)鳥羽町である。なぜ横山池が、この物語に繋がってくるかというと、近年、島のモデルになった可能性が浮上したからだ。その推論を導き出したのは、芸濃町椋本出身の文筆家・伊藤裕作さん。乱歩が作品の執筆に当たり、作中にも名前が出ている津市や、その隣にある芸濃町を取材した可能性は高く、伊藤さんは、菰田源三郎のモデルは明治17年に製茶の輸出で大成功した椋本の実業家・駒田作五郎で、先述の駒越五良八が私費を投じて巨大な横山池をつくりあげた話をモチーフにしているのではないかとしている。
 確かに、小さな池を巨大な池へと生まれ変わらせたエピソードは文豪のイマジネーションを刺激するに十分と感じる。そして、近隣の石山観音の巨大な摩崖仏が生み出す神秘的な光景や馬の瀬と呼ばれる巨岩からの景色も、理想郷の描写に影響を与えたかもしれないなどと思えてくる。
 ちなみに、この推論を取り入れた劇団『水族館劇場』の作品『パノラマ島綺譚外傳 この丗のような夢』が、街道と参道が繋がっている椋本の古刹・東日寺の境内で7年前に上演された。境内一杯に巨大な野外舞台が建てられ、さながら乱歩が描いた理想郷が顕現したようなひと時だったことを思い出す。(本紙報道部長・麻生純矢)

 

スペインでの食の体験を報告する古田さん(三重調理にて)

大川学園・三重調理専門学校・調理製菓2年の古田茉子さんが7月20日、スペインで行われた「料理人交流」の成果報告会を同校で行った。
 この交流会は、三重県雇用経済部県産品振興課が高校や専門学校で料理人を目指す若者を対象に募集しているもの。
 今回は5月14日から19日まで、県内のプロのシェフに同行。スペイン・バスク州でも指折りの美食の街、サン・セバスティアンで三ツ星レストランや、男性が集う「美食倶楽部」、バル街などを巡って実際に食事した感想や食文化の違い、また、レストランシュフとコラボした南蛮漬け作りの体験談も話した。
 古田さんは「世界の旬の食材を取り寄せたり、ありとあらゆる調味料を集めてあり、料理にかける情熱がすごかった。盛り付けもその場でアレンジするなど、日本食の違いもあった」と報告すると共に、「何でもやってみる、挑戦することの大事さが分かった。体験が自分の身になり、未来に繋がるので皆さんも体験してほしい」と話した。
 会場では美食倶楽部で教えてもらったレシピを基に作ったチーズケーキの試食も行われた。

 甘酒は冬のものというイメージがあるが、実は夏のもの。夏の季語にもなっている。夏バテ対策にぴったりの栄養ドリンクなのだ。
 甘酒を作ってみようと思い立った。用意したのはスーパーで買ってきた米麹。水とご飯と米麹を混ぜて、ヨーグルトメーカーにセットした。
 ヨーグルトは毎週のように作っているけれど、甘酒は初めてだ。うまくできるか、砂糖も入れないのに甘くなるかと心配しながら六十度で八時間。メーカーが止まった。味見したらとても甘い。香りも良い。自作したのに売っている甘酒と同じぐらい美味しい。いや、こちらの方が濃厚だ。ご飯と水がこんなにも甘くなるかと驚いた。麹菌とヨーグルトメーカーのおかげだ。
 麹菌の仕事はすごい。甘酒を作れる。味噌も醤油も作れる。酒も焼酎も作れる。でも、麹菌は乳酸菌のような細菌ではなく、コウジカビというカビだ。日本人の食生活はカビに支えられている。
 さて甘酒だ。冷蔵庫で冷やして、毎日少しずつ飲んでいこう。ビタミンB群、ミネラル、アミノ酸などが含まれ、美肌やアンチエイジングに効果があるという。
 カロリーが高そうだから、毎日飲めば太るかもしれない。それでも、甘酒は甘くて美味しくて幸せになる飲み物だ。ヨーグルトと混ぜても美味しい。これからは米麹が日常の買い物になりそうだ。  (舞)

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