特別寄稿

(前回からの続き)
◆人は苦しんだ分強くなれる
人は苦しんだ分強くなれるのは本当だ。人生も同じ。私は娘達を抱えながらジムをわずか3カ月間でオープンさせる前、体育教師を辞めて無職となり、当時は一度ゼロになり、家具も電化製品も車も土地も何もなかった時代があった。
半日涙が止まらなかった日も。多分、一生分の半分の涙がこぼれ、泣くだけ泣いて、3カ月後にはジムを建てていた。
ゼロ(無)は無限大のパワーの源でもある。人生も試合も何事が起こったとしても又リセットして頑張るしかないのだから。若いころは出来なかったけど、試合でも練習でも、2度失敗しても、3回目には必ず当然のように挙げて来る。ジムの会員さんはよく知っているが、ゼロ(無)は私の最大の武器だ。ゼロ(無)を知る者は車のようにギアチェンジさえすれば200キロオーバーの無限のパワーが一瞬で出せる。人生も同じで最後はハッピーエンドで終わりたい。
失敗やヘマばかりの人生だったが、50年近く全日本のトップレベルで現役でやって来れたのも己の弱さを知っていたから、流した涙の分だけ心の痛みも悲しみも力に変え乗り切って来たから。
初心の無を忘れず、自分の弱さを胸に刻むことは、60歳代になっても20歳代に負けないパワーと肉体を得られるんだと。会員さん達にも手本として実践出来たと思っている。
余談だが私の昔の教え子が先日の豪雨(土砂災害)の愛媛にも何人かおり、無事と聞き良かったと思っている。
若い皆さんは人生予期せぬ何事が起こってもへこたれず諦めないでほしい。自分を信じて全力でそして無欲で頑張っていれば、いつかいい日もきっと来ますよ。何度打たれても諦めの悪いのも、60歳を過ぎて最強で不死身の如くいられるゆえん。皆さんも出会った全てに人に感謝し、どうか最後はハッピーエンドで。
いつも見守っていてくれる天の神様は祈っても願ってもすぐには救いの手をさしのべてはくれないが、諦めず頑張り抜いて、心の中は血も涙も止まらなくても期待せず、ただ頑張った人にだけ、たまに微笑んでくれる。
自分はいつも笑顔でなんていられなかった弱い人間だが最後だけ、ラストシーンだけは微笑んでいたいと思っている。
何もないと感じる人生より、荒波と失敗ばかりでも、悩み苦しみ、時には涙した日々も、忘れられない人や悲しみさえ、楽しい人生だったから。
優しかった人も意地悪で裏切った人も、私は全ての人のお蔭で年齢など無視して子供の頃より少しは強くなれた気がしている。皆さんもつらい時ほど、ギアチェンジして力に変えて下さい。「自分の無力さを感ること」のできる者は、ブルース・リーのように、何度打たれても、一瞬で電光石火のごとく大逆転できるチャンスでもあります。
スポーツは、団体も個人も、監督や指導者も皆が清く正しく美しく、正々堂々と戦っているのなら、伊調選手のようなパワハラも起こらなかったのだろうに、残念なことに職場と同じように理不尽な暴力やいじめやひいきや差別や資金流用や隠ぺいまで絶えない。ほじくり起こせば至る所にある。私もかつては県パワー協会の理事長の時代、見たくもないものを見、また50年近く現役でやって来た選手の一人としてフライング事件のように審判にも何度か泣かされた。
ある県外の大会で私が試技に入る前から主審が副審にアイコンタクト(目配せ)でサインを送っており、最初から赤ランプ2つで失敗を決めていて、審判と同じ出身県の選手が150㎏で優勝した(私は170㎏を3度挙げたが)ことで7連勝が途切れた。また別の3種目の大会では、出る杭は打たれるで、ベンチの時、胸上でバーベルを構えたまま主審のスタートの合図が、まるでお茶でも飲んいるかと思うくらい、5秒近く待たされ危なく失格しそうになったこともあった(無論、挙げて優勝した)。
スポーツの闇の部分ばかり毎日話題に上がるが、伊調選手が5連勝に向けトレーニングを開始したと聞き何よりである。自分も昔から仕事に子育てに、さらに協会運営に指導や自身のトレーニングもあったりと多忙だった。さらに近年は親の在宅介護など色々と乗り越えてきた。
伊調選手の復活と活躍に、私も自身の人生と重ねながら期待している。スポーツは「清濁併せ呑め」とまで言わないが、その両面(光と闇)を見たり経験して来た者は、本来の居場所と素の自分に戻ると、とんでもないパワーを発揮する。
2年程前、私が県のベンチ記録より上を挙げた大会があったのだが、実は前夜、ジムの仕事終えて実家へ直行すると、まだ少し歩けた頃の認知症の母が、家のあちこちに便失禁していた。
本来なら、もう私も60歳代であり試合前夜は、ゆっくりしたい所だが、夜中に母をシャワーとお風呂に入れ、2時頃まで畳やフローリングを拭いたり洗濯機2回まわしたりとたいへんだった。
ジムの宴会や行事の後も、こういう場面がよくあった。お風呂に入れ直した後、深夜の3時か4時にやっと私が入浴、さらに洗濯物干しなどで寝不足のまま60歳代が試合に向かった事も。しかし、そんな時に限って心のエンジンは何故か誰にも負ける気がしなかった。
これは苦難を乗り越えて来た者しかわからない感覚です。もちろん3試技全て成功だった。
これからは関わってくれた全ての人に感謝と、会員さんや一人でも多くの人に還元したいと考えている。
「人は何を笑うかによって人柄がわかる」と言われるが、最後は会員さんや、多くの人が喜ぶ姿を見たいと思っている。私はまだ作り笑いしか出来ないから。
この原稿を書いている時、母が体調を崩し、今は回復したものの体力は低下した。週一回、点滴を抜針してもらい入浴させて来たが、もはや介助しても歩けなくなり、お姫さん抱っこして風呂場へ(シャワー浴)。私の試練が増えた。
心にスニーカーを履ける日はまだ遠く、微笑みさえ上手く出来なくなったが、無敵と不死身の親子コンビで乗り越えて行こうと思っている。
母はもう91才になったが、寝たきりから何度立ち上がって来ただろう。手本が目の前にいるから、私自身も試練や痛みから何度でも立ち上がって来れたのだと思っている。
在宅介護は点滴交換等もあり海外旅行どころか県外へ一泊も出来ないが人事を尽くしたその先に天が微笑む日が来ると少し信じたい。 (終わり)

2019年のラグビーワールドカップ、2020年の五輪とパラリンピック、そして、2021年のワールド・マスターズ・ゲームズ関西と、今や日本は世界の旅行社から熱い視線が注がれている(らしい)。
ブレグジット(2016年に起こったイギリスのEU《欧州連合》離脱問題のこと)が懸念されるものの、英国もそのうちの一つである。この国の英国旅行業協会ABTAは、従来EUエリアで開催されてきたものを覆し、来年2019年のトラベル・コンベンションは東京で開催する事に決めた。期間は10月7日から9日で、場所はグランドプリンスホテル新高輪。観光経済新聞によると、ABTA加盟の英国の旅行社幹部など、500人の参加が見込まれている。
とはいえこれは、ABTAのウェブサイトによると、日本政府観光局JNTOが他国と競争入札した結果のようだ。メガイベントもそうなのだが、投下資本を上回る成果を期待したいものである。その為には、2012年のロンドン五輪における英国の、隠れた知恵も拝借すべきであろう。
2012年の英国へのインバウンドは、『クラウディングアウト(貨幣供給量不変のもとでの国債の市中消化による財政支出の増加が利子率の上昇を通じて民間の資金需要を抑制し、民間投資を減少させる現象のこと)』によって前年を割ったが、翌年からは急上昇、国連世界観光機関発行のツーリズムハイライト2014によると、2011年は2930万6千人、2012年は2928万2千人、そして、2013年には3106万4千人となった。その秘訣は何だろうか?
実のところ、これは英国政府観光庁による、スクリーン・ツーリズム作戦の結果である。五輪開会式でのジェームズ・ボンドとエリザベス女王(スタンドイン)の、メインスタジアムへのパラシュート降下に始まり、同年中に、ロンドンとスコットランドを舞台とした007『スカイフォール』を世界で公開、同時に、英国政府観光庁は世界に向けて4種類のボンドツアーを販売し、しかもそれは続編『スペクター』の公開を経て今もなお継続中である。
ツーリズムハイライト2018によると、この映画公開後の英国へのインバウンドは3581万4千人で、オリンピック開催年に比べて20%近くも増加した。著名な映画によるプロモーション効果は驚くほど長いのである。
ちなみに、『スカイフォール』の世界配給収入は11億856万1013米ドル(当時のレートで1081億8446万9259円)、『スペクター』は8億8061万4260米ドル(同958億203万6224円)となっている。英国では映画輸出も『サービス貿易』の柱の一つであり、所轄はデジタル・文化・メディア&スポーツ省DCMSとなっている。
007最新作のクランクインは来年初頭、監督は日系米国人のキャリー・ジョージ・フクナガ。公開予定は配給会社と監督の交代で2020年となり、海外での配給はユニバーサル・ピクチャーズからとなる。ストーリーは秘密だが、前作終盤の傾向からみると、映画の冒頭にボンドの結婚と花嫁の死が起きそうだ。原作では、ボンドは精神的リハビリも兼ね、外交使節として日本に送られるが、偶然にも仇と対峙する事になる。このプロットどおりならば、日英間の観光交流が促進されること受け合いだ。もちろん、ロケ地は原作にある三重県が適している。三重はG7サミットを開催して十分な道路整備を行ったが、外国人観光客が比較的少ないために野次馬が少なく、短期間での映画撮影が可能だ。最近だと、第31回東京国際映画祭にエントリーされ、来年2月に全国公開される『半世界』(阪本順治監督)が、約一カ月間撮影されている。
ABTA関係者ならば、来年から2020年にかけて日英両国政府が実施する『日英文化季間』も踏まえ、興味を抱くに違いない。でなければ、本気度が疑われる次第である。(O・H・M・S・S「大宇陀・東紀州・松阪圏サイトシーイング・サポート」代表)

『遷都1300年祭』の前年から始めた古都の定点観測も96回目となった。今回は観光協会の専務理事ご同行である。
例年この頃は、春と並んで最も観光客が多いシーズンだが、今年も近鉄奈良駅周辺では、ハザードランプを点滅させたツアーバスが散見し、奈良公園も多くの外国人観光客で賑わっている。餌がたくさん貰えるので、鹿たちも満足そうだ。角切り行事も終えたようである。
傾向としては、アジア系よりも欧米系のツアー客が目立ち、日本人団体客は学生さんも含め、全くと言ってもいいほど見当たらない。興福寺の境内も外国人の方が遥かに多いようである。この世界遺産興福寺の『中金堂』は、江戸時代に焼失以来301年を経た今年、本格的に再建されて、いよいよ明日から一般拝観が始まる。おそらく日本人訪問者数も急増するに違いない。
思い返せば、2011年の東日本大震災と原発爆発では、47都道府県から等しく外国人訪問者の姿が消えた。日本人観光客も自粛ムードや史上最大の海外旅行ブームによって大きく落ち込み、奈良も例外ではなかった。誰一人、今にちの賑わいは想像し得なかったのだ。隔世の感ひとしおである。
三条通りでは、色とりどりのヒジャブを被ったムスリムの御婦人方が多く見られ、茶巾うどんの店も外国人観光客による長蛇の列、また、猿沢池のほとりでは、春から建設中だったホテルも足場を解かれ、総板張りの外壁を見せている。猿沢インのマネージャーによると、関西の外部資本によるものだそうだ。私達は猿沢イン3階にあるビジターズ・ビューローを訪ね、大和路カレンダー2019の宣材を預かり、国連世界観光機関へと向かった。
国連世界観光機関の駐日事務所では、局長が応対してくれた。私は先月大阪で開催された『メガイベントを通じた地域振興・地域活性化』シンポジウムのお礼を述べると、ふるさと新聞に載せたシンポジウムレポートを渡した。また、来年2月に三重県で開催される『日本食文化会議2019』の記事や、来年12月に京都で開催される国連世界観光機関とユネスコの『観光と文化をテーマにした国際会議』のコピーを提供した。
局長は、10月11日から13日にかけて中国の揚州市で開催された『世界運河都市フォーラム』に出席したそうで、その冊子を見せてくれた。このフォーラムのテーマは世界運河都市文化の保護・継承と利用で、米国をはじめ、英国、ドイツ、フランスなど、31カ国から関係者約400名の参加者があったそうだ。が、気候変動による海面上昇問題に悩むベネツィアの参加はなかったようである。気候変動による環境急変への対応策が、今後、大きなテーマになると思うのだが。
帰り際に米国人広報担当副マネージャーに会った。彼女は大阪でのシンポジウムでカメラウーマンに徹していた。慣れない日本での労をねぎらった次第である。
なお、昨年10月に三重県で開催された『観光業の持続可能な発展における女性の役割』のようなシンポジウムを、来年2月に奈良で開催するそうだ。奈良らしいテーマを検討しているようである。
(O・H・M・S・S「大宇陀・東紀州・松阪圏サイトシーイング・サポート」代表)

[ 13 / 31 ページ ]« First...1112131415...2030...Last »