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特別寄稿
皆さん、明けましておめでとうございます。新しい年、2013年は、伊勢神宮の第62回式年遷宮が予定されており、三重県にとっては、明るい話題に事欠かない年になりそうな予感がします。皆さんのご健勝、ご活躍を心からお祈り致します。
ところで、新年と言えば初夢。2013年の世界経済がどうなるか、外れることを承知で大胆に占ってみたいと思います。
まず、アメリカですが、私は、アメリカの将来については比較的楽観視しています。理由はいくつかありますが、人口が増え続ける事がその第1です。3億人を超えたアメリカの人口は50年には5億人に達するとの推計もなされています。 第2の理由は、シェールガスに代表される資源の豊かさです。第3の理由は、群を抜いた軍事力を保有していることです。現在の世界で、どこの紛争地域にも急行出来る空母艦隊や海兵隊を擁しているのはアメリカだけです。
アメリカの軍事力を脅かすような国は、当面、どこにも見当たりません。もともとこのような強固なベースを持つアメリカですが、オバマ大統領は、比較的合理的な考え方の持ち主であり、また、アメリカの企業は、チャレンジングな経営者に率いられているので、2013年も、2~3%の実質成長は、十分見込めるような気がしています。
次はヨーロッパです。ユーロ危機の後遺症を克服するには相当時間がかかると見ています。なぜなら、ユーロ圏の債務問題は、ある意味、わが国のバブルの後遺症に似ているからです。
しかし、ユーロを離脱する国が出始め、ヨーロッパがバラバラになるとは考えていません。20世紀に2度の世界大戦を経験したヨーロッパ各国の紐帯は、私たちが想像する以上に強いものがあります。フランスとドイツの歴史家が共同して第1次世界大戦史を執筆していますが、これは、東アジアではなかなか考えにくいことです。ユーロ圏の2013年の実質成長率は、0~1%の間ではないでしょうか。
中国はどうでしょうか。昨年、指導部の交代があり新しく選ばれた習近平総書記に率いられたチャイナセブン(最高指導部を構成する中国共産党中央政治局常務委員の通称)の顔ぶれは当初の予想に比べれば、より高齢でより保守色が強いと言われているようです。 世界には、この7人が、国際経済や国際金融について十分な知見を有しているのか、果たしてこの7人で合理的な経済運営が出来るのか、訝る意見もあるようですが、こればかりは、実績を見なければ何も言えません。
習体制は10年続くと見られているので、習総書記の舵取りに世界の耳目が集まっています。ただし、首相候補の李克強副首相は、経済通と見られており、チャイナセブンが何か非合理な意思決定(たとえばバブルを突然潰すような強硬策)を行わない限りは、引き続き7~8%の実質成長が可能ではないでしょうか。
では、このような世界の経済環境の中で2013年のわが国の展望をどのように捉えるべきでしょうか。 年末に行われた総選挙では、民主党が大敗し、自民党が政権復活を果たしました。自然体で見れば、2013年のわが国の実質経済成長率は、0~1%程度だと考えられますが、成長を確かなものとするためには次のような政策課題に本腰を入れて取り組む必要があると思います。
中長期的には人口を増やす政策に挑戦すべきです。別のところに書きましたが(ダイヤモンドオンライン、日本の優先順位2012年2月7日)、人類の5千年の歴史の中で、人口が減って栄えた国や社会のことは寡聞にして知りません。 当面の課題としては、まず、規制緩和(成長戦略)の大胆な実行です。政府に出来ることは、民間のチャレンジや構造改革をしやすくするような土俵を整えることにあるのです。
次は、社会保障と税の一体改革です。3党合意で選ばれた国民会議のメンバーは立派な人が多いように見受けられます。国民会議を生かすも殺すも政治のリーダーシップ次第です。
最後に、中国など近隣諸国との外交関係を、少しでも改善して欲しいと願うものです。
(出口 治明 美杉町出身。ライフネット生命保険㈱代表取締役)
2012年12月31日 AM 4:55
衆議院解散総選挙が終わりました。民主王国と言われた三重県も自民党が3つの小選挙区での議席と比例復活で2議席の計5議席を獲得したのに対して、民主党は小選挙区の2議席に終わりました。大きな変化です。日本全体でも、自民と公明で325議席となり、衆議院では3分の2以上となります。
政治の世界は結果がすべて。なんであれ、議席数が結局は今後の政治の動向を決めます。これから3~4年の間、自民と公明が中心の政治決定が行われることになります。
安倍首相の金融政策と、公共事業を中心とした経済活性化政策が展開されることになるでしょう。舵は大きくきられ、積極財政出動となるではないかと思います。民主党政権下でも、東日本大震災の復興予算によって赤字は膨らみました。さらに財政出動となることに日本は耐えられるかどうか。
しかし、中途半端な改革は日本にとって意味のないシナリオ。安倍内閣が思い切りによって日本経済に新たな展開をもたらすことができるか、注目です。
そして自民と維新で348議席となると、憲法改正が現実的な選択肢となりました。確かに日本国憲法は平和主義をうたい、素晴らしい内容を持っています。 しかし、確かに現実との乖離はあります。日本国憲法を変えないために、国民投票の手法を封印してしまいました。原発問題も本来なら国民投票にかけるべきです。
しかし、憲法改正をさせない、ために国民投票の難易度があがり、結局は国民が政治に参画できるチャンスが非常に少なくなったことも確かです。また憲法が素晴らしいと言われながらも、国民は憲法から遠ざかるという現象にも繋がっています。
私は、憲法改正には、日本の平和憲法を今の日本人が新たに作り変えるという意味もあると思います。平和憲法に命を吹き込むという意味を持たせることもできるのです。2016年の衆参同時選挙に、憲法改正の国民投票をしてはどうでしょうか。この衆議院選挙の結果は、タカ派、ハト派という戦いからすれば、タカ派の圧倒的勝利。憲法改正の国民投票を、ハト派の勢力奪取に使うということも考えられるのです。
なにはともあれ、日本は大きく動きます。大きく動くだけの結果が出ました。問題は、どう動くのか、です。閉塞感のある日本では動くことをとめるよりも、どのようにいい方向に動かせるか、に集中して、与野党問わず、努力すべきでしょう。
三重県もこうした動きのなかで、大きく動かざるを得ないでしょう。幸いに鈴木知事は超活動的な政治家です。これまでの日本の発想を大きく超える展開を期待しています。日本の未来をかけた勝負がこれから確実に起こります。
これが吉と出るか、凶と出るか。可能性は五分と五分と言ったところでしょうか。私たちが、この勝負を吉と向かわせることができるか、という面も大いにあります。
新年、大いにがんばりましょう!暴れましょう!きっとその先に素晴らしい新たなステージがあるはずです。
(児玉 克哉 三重大学副学長・教授)
2012年12月31日 AM 4:55